ディアマンテのデザイナー
- 2015/04/05
- 00:00
僕は、車は走ればいいと思っている。
こだわりがない。
ディアマンテというのは、三菱自動車の車だ。
1990年ごろに出てきた車だ。
カー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれているので、評判の良かった車だったに違いない。
車にうとい僕が、ディアマンテという車について語るのではない。
ちょうどディアマンテが市場に出た次の年に開催された講演会に出席した。
それは学会が主催する講演会で、テーマはインダストリアル・デザインだ。
当時評判となっていた商品について、デザインの立場から論じるというものだ。
取り上げられたのは、客船、カメラ、家電と車である。それぞれのメーカーのデザイン部門からの発表があり、さらに大学の先生、建築設計事務所のデザイナーからのデザインに関する講演があった。
当日参加するまでは、僕が聞きたかったのは、当時担当していたお客様にカメラメーカーがあったことから、カメラのデザインの話、それと以前、僕がかかわっていた船の設計ということから、客船の話だった。
客船として、取り上げられたのは、当時脚光を浴びていた「クリスタル・ハーモニー」である。その豪華客船は、美しい名前の響きに負けることなく、とても美しい、まるで高貴な女性のような神々しさがあった。
きれいな船だ。
クリスタル・ハーモニー
船は仕事では、機能面を追求したタイプのものを数多くみてきたが、この船はきれいだと思った。
その豪華客船の話の後に出てきたのが、ディアマンテである。
車への関心が低い僕は、聞きたかった客船の話しが終わり、後は、車の次に登場するカメラの話に、すでに心が飛んでいた。
当日の講演会では、予稿集という資料が配付されている。
それには、学会の講演会らしく、各発表者が学会誌に掲載する論文の要領で解説資料を載せている。
”はじめに”から始まり、製品の概要紹介、特長、設計のポイントとつづき、最後に”終わりに”でまとめる流れである。
ところがディアマンテの予稿には、別世界に引き込まれるようなこころの高まりを覚えてしまった。
”はじめに”はない。
書き出しは、こうだ。
“僕は小学校の頃から車が好きで、当時のカタログや広告を集めているうちにサスペンションやステアリングの機構に興味を持ち、、、、、、、、中学校の頃、僕の教科書の余白は車の落書きでいっぱいだった。デザインという言葉もピンと来なかったが、自分の考えた夢の車に、大好きな女の子を乗せたい・・・・そんな夢が、、、、”
と、およそ学会の講演会の予稿集には、似つかわしくない書き出し、内容である。
ただ、それは筆者の車のデザインに対する熱き思いを、読者に理解させるに十分な書き出しである。
読み始めると、まるで面白い小説を読むように、どきどきしながら、筆者の世界に引きずり込まれていく。
そのなかで、車が世に出るまでの、デザイナーたちの熱き思いと、プロジェクトを進めていくなかでのデザイン上の課題や、いかにしてそれを乗り越えていくかが、語られている。
この講演会から20年以上の時間が過ぎた。
ディアマンテは、その役割を終えたのか、すでに現役ではない。
講演会のときに聞いた言葉は、ほとんど記憶の外に飛んでしまっている。
脳の記憶の中に残っている言葉は、”ミドルクラスの価格帯で高級車を作ろうとしていた”だけだ。
ただ、今でもこの予稿集は、僕の机の引き出しのなかに収まっている。
厚さ数ミリメートルの薄い冊子であり、20年以上の間に、どこかに消えてしまってもおかしくないのであるが、依然として現役である。
講演をされたのは、渋谷克博さんという。
今もデザインの仕事をされているかどうか、存じあげないが、今でもこの予稿集を読むと、ものづくりに、熱い思いで取り組む人がいて、そのような人たちの頑張りで、素晴らしい製品が世の中にでてきた、ということを思い出させてくれる。

こだわりがない。
ディアマンテというのは、三菱自動車の車だ。
1990年ごろに出てきた車だ。
カー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれているので、評判の良かった車だったに違いない。
車にうとい僕が、ディアマンテという車について語るのではない。
ちょうどディアマンテが市場に出た次の年に開催された講演会に出席した。
それは学会が主催する講演会で、テーマはインダストリアル・デザインだ。
当時評判となっていた商品について、デザインの立場から論じるというものだ。
取り上げられたのは、客船、カメラ、家電と車である。それぞれのメーカーのデザイン部門からの発表があり、さらに大学の先生、建築設計事務所のデザイナーからのデザインに関する講演があった。
当日参加するまでは、僕が聞きたかったのは、当時担当していたお客様にカメラメーカーがあったことから、カメラのデザインの話、それと以前、僕がかかわっていた船の設計ということから、客船の話だった。
客船として、取り上げられたのは、当時脚光を浴びていた「クリスタル・ハーモニー」である。その豪華客船は、美しい名前の響きに負けることなく、とても美しい、まるで高貴な女性のような神々しさがあった。
きれいな船だ。
クリスタル・ハーモニー
船は仕事では、機能面を追求したタイプのものを数多くみてきたが、この船はきれいだと思った。
その豪華客船の話の後に出てきたのが、ディアマンテである。
車への関心が低い僕は、聞きたかった客船の話しが終わり、後は、車の次に登場するカメラの話に、すでに心が飛んでいた。
当日の講演会では、予稿集という資料が配付されている。
それには、学会の講演会らしく、各発表者が学会誌に掲載する論文の要領で解説資料を載せている。
”はじめに”から始まり、製品の概要紹介、特長、設計のポイントとつづき、最後に”終わりに”でまとめる流れである。
ところがディアマンテの予稿には、別世界に引き込まれるようなこころの高まりを覚えてしまった。
”はじめに”はない。
書き出しは、こうだ。
“僕は小学校の頃から車が好きで、当時のカタログや広告を集めているうちにサスペンションやステアリングの機構に興味を持ち、、、、、、、、中学校の頃、僕の教科書の余白は車の落書きでいっぱいだった。デザインという言葉もピンと来なかったが、自分の考えた夢の車に、大好きな女の子を乗せたい・・・・そんな夢が、、、、”
と、およそ学会の講演会の予稿集には、似つかわしくない書き出し、内容である。
ただ、それは筆者の車のデザインに対する熱き思いを、読者に理解させるに十分な書き出しである。
読み始めると、まるで面白い小説を読むように、どきどきしながら、筆者の世界に引きずり込まれていく。
そのなかで、車が世に出るまでの、デザイナーたちの熱き思いと、プロジェクトを進めていくなかでのデザイン上の課題や、いかにしてそれを乗り越えていくかが、語られている。
この講演会から20年以上の時間が過ぎた。
ディアマンテは、その役割を終えたのか、すでに現役ではない。
講演会のときに聞いた言葉は、ほとんど記憶の外に飛んでしまっている。
脳の記憶の中に残っている言葉は、”ミドルクラスの価格帯で高級車を作ろうとしていた”だけだ。
ただ、今でもこの予稿集は、僕の机の引き出しのなかに収まっている。
厚さ数ミリメートルの薄い冊子であり、20年以上の間に、どこかに消えてしまってもおかしくないのであるが、依然として現役である。
講演をされたのは、渋谷克博さんという。
今もデザインの仕事をされているかどうか、存じあげないが、今でもこの予稿集を読むと、ものづくりに、熱い思いで取り組む人がいて、そのような人たちの頑張りで、素晴らしい製品が世の中にでてきた、ということを思い出させてくれる。
