パンツはいてるやろ
- 2015/04/09
- 00:00
高校の同期には、いろいろな会社に勤めていた奴がいる。
彼らの多くは、中学から一緒のメンバーもいる。
そうなると6年間のつきあいで、これは結構重要な時期に、特に青春時代の多感な時期に、長い間一緒にいた者同士ということになる。
特に、通学の電車が同じメンバーとは、朝から顔をあわせているので、友達のつきあいの度合いが違う。
そのメンバーの一人に、保険会社に勤務していたI君がいる。
I君は、就職してから営業系の仕事一筋にやっている。
営業の世界のお客さんとのつきあい、目標達成に対する厳しさを長年経験しているわけだ。
技術系から出発した僕とは、そういう点では、違うところが多い。
I君が会社に入った初めの数年間が,一番厳しく、また楽しくもあったという。
あるとき、辛口のお客さんに提案することになった。
保険の営業と言っても、個人相手ではなく、企業相手の仕事なので、規模も大きいかわりに、競争も激しい。
当然1社だけの提案ということはなく、同じ条件で各社に提案をさせるわけだ。
I君が、今日こそは、この提案と見積で決めてやろうと意気込んで、お客さんを訪問した。
自信のある提案内容を説明し、最後に見積書を提示する。
40代の脂の乗りきった、お客さんの部長が、めがね越しに、I君の顔を覗き込んで言った。
「随分頑張った見積でんな。でもまだ、パンツはいてるんと違いますか」
えげつない関西弁で言う。
見積金額が、大きな値引きをしておられますが、まだ、ぎりぎりまでは値引いていないのではないですか、というのが標準語での言い方になる。
I君は、このまま押し切ろうとしても、契約はもらえないと咄嗟に判断し、その場は、一旦帰ることにした。
値引きというのは、一発でどこまでの価格を出せるか、簡単に決まる場合とそうでない場合がある。
承認プロセスをどこまで上に上がるかにもよる。
街の大型店でも、店員が全権限を持っている場合もあるが、その上のマネージャーのもっている値引き額、さらにその上の店長が持っている値引き額、その値引きの深さが違うということはよくある。
それと同じだ。
I君は、再度社内に持ち帰り、この案件の競合状況や、勝つことによる今後見込めるビジネスの量や、反対に負けた場合の他に与える悪影響を説明し、絶対に勝たねばなりませんという論法で、上層部の承認を取りに行った。
もう一段深い値引きの提案を可能にしたのだ。
再度訪問したI君は、自信を持って、脂ぎっしゅ部長に言った。
「部長、パンツを脱いできました」
部長は、見積書を受け取る。
しばらく、見積書の中の数字を見つめたまま動かない。
I君は、答えを待っている。
そして部長は、またまためがね越しにI君に言い放った。
「今度はパンツを脱いできはったんか。。。。でもお宅さん、パンツ2枚はいてんのと違いまっか。まだもう1枚はいてまっしゃろ」
I君は、開いた口を閉じられなかった。
だが、ここからがI君の真骨頂である。
今度は、このままでは引き下がれない。
とことんくいつくことにした。
金額以外の契約条件の話もひとつひとつ丁寧に説明した。
お金には出てきていない部分がある。
今、この契約にサインされることが、お客様にとってベストであることを、いつも以上に真剣に訴えた。
。。。。。。
その結果、脂ぎっしゅ部長は、ついに提示した提案で契約することを決めてくれた。
べたべたの営業であり、ロジカルセリングとはほど遠い話であるが、I君いわく、あの案件で、営業としてやっていく自信ができたと。
この話をI君からだいぶ時間が経ってから聞いた。
それをあるとき、業界は全く違うが、社内のやり手の女性営業に話をした。
感心するかと思って、彼女の反応を待った。
「私だったら、パンツはいているやろ、と言われたら、いえ、いつも私はノーパンですと言い返すわ」
やはり、女性のパワーはすごいね。
女性を活用せんといかんということだね。

彼らの多くは、中学から一緒のメンバーもいる。
そうなると6年間のつきあいで、これは結構重要な時期に、特に青春時代の多感な時期に、長い間一緒にいた者同士ということになる。
特に、通学の電車が同じメンバーとは、朝から顔をあわせているので、友達のつきあいの度合いが違う。
そのメンバーの一人に、保険会社に勤務していたI君がいる。
I君は、就職してから営業系の仕事一筋にやっている。
営業の世界のお客さんとのつきあい、目標達成に対する厳しさを長年経験しているわけだ。
技術系から出発した僕とは、そういう点では、違うところが多い。
I君が会社に入った初めの数年間が,一番厳しく、また楽しくもあったという。
あるとき、辛口のお客さんに提案することになった。
保険の営業と言っても、個人相手ではなく、企業相手の仕事なので、規模も大きいかわりに、競争も激しい。
当然1社だけの提案ということはなく、同じ条件で各社に提案をさせるわけだ。
I君が、今日こそは、この提案と見積で決めてやろうと意気込んで、お客さんを訪問した。
自信のある提案内容を説明し、最後に見積書を提示する。
40代の脂の乗りきった、お客さんの部長が、めがね越しに、I君の顔を覗き込んで言った。
「随分頑張った見積でんな。でもまだ、パンツはいてるんと違いますか」
えげつない関西弁で言う。
見積金額が、大きな値引きをしておられますが、まだ、ぎりぎりまでは値引いていないのではないですか、というのが標準語での言い方になる。
I君は、このまま押し切ろうとしても、契約はもらえないと咄嗟に判断し、その場は、一旦帰ることにした。
値引きというのは、一発でどこまでの価格を出せるか、簡単に決まる場合とそうでない場合がある。
承認プロセスをどこまで上に上がるかにもよる。
街の大型店でも、店員が全権限を持っている場合もあるが、その上のマネージャーのもっている値引き額、さらにその上の店長が持っている値引き額、その値引きの深さが違うということはよくある。
それと同じだ。
I君は、再度社内に持ち帰り、この案件の競合状況や、勝つことによる今後見込めるビジネスの量や、反対に負けた場合の他に与える悪影響を説明し、絶対に勝たねばなりませんという論法で、上層部の承認を取りに行った。
もう一段深い値引きの提案を可能にしたのだ。
再度訪問したI君は、自信を持って、脂ぎっしゅ部長に言った。
「部長、パンツを脱いできました」
部長は、見積書を受け取る。
しばらく、見積書の中の数字を見つめたまま動かない。
I君は、答えを待っている。
そして部長は、またまためがね越しにI君に言い放った。
「今度はパンツを脱いできはったんか。。。。でもお宅さん、パンツ2枚はいてんのと違いまっか。まだもう1枚はいてまっしゃろ」
I君は、開いた口を閉じられなかった。
だが、ここからがI君の真骨頂である。
今度は、このままでは引き下がれない。
とことんくいつくことにした。
金額以外の契約条件の話もひとつひとつ丁寧に説明した。
お金には出てきていない部分がある。
今、この契約にサインされることが、お客様にとってベストであることを、いつも以上に真剣に訴えた。
。。。。。。
その結果、脂ぎっしゅ部長は、ついに提示した提案で契約することを決めてくれた。
べたべたの営業であり、ロジカルセリングとはほど遠い話であるが、I君いわく、あの案件で、営業としてやっていく自信ができたと。
この話をI君からだいぶ時間が経ってから聞いた。
それをあるとき、業界は全く違うが、社内のやり手の女性営業に話をした。
感心するかと思って、彼女の反応を待った。
「私だったら、パンツはいているやろ、と言われたら、いえ、いつも私はノーパンですと言い返すわ」
やはり、女性のパワーはすごいね。
女性を活用せんといかんということだね。
