スペシャリストFさん(1)
- 2015/04/24
- 00:00
IT系の会社にいたときは、アメリカから技術者を呼んで、日本のお客様に行くことがしばしばあった。
技術者は、専門分野におけるスペシャリストである。
当然その道一筋という人たちなので、お客様を訪問し、技術的なプレゼンテーションをすると、ほとんどの場合、お客様の評価が高く、お客様は満足される。
彼らは、大学の研究室にいる研究者ではなく、企業の中で、ある製品を売るための技術者であるので、営業的なセンスを持っているのは、当然と言えば、当然であるが、いつも思ったのは、もしも同じような技術レベルを持っている日本人の場合は、どうだろうか、ということである。
技術的には素晴らしいスキルや経験を持っていても、お客様に対しては、持っている技術力をしっかりと見てもらい、理解してもらうことができるだろうか、と考えると、意外とそれができない、日本人技術者が多い。
アメリカでは、幼い頃から、なにごとでも自分をしっかりと説明する、自己主張するという習慣が身についている。日本では、自己主張というのは、往々にして評価されない場合が多い。
そういう背景もあるのかもしれない。
アメリカの技術者たちは、どんな高い技術や経験を持っていても、それを相手に対して、評価されないと意味がないということが、体に染みついているように感じることが多かった。
その中のひとりに、Fさんがいた。
Fさんは、ある専門的なソフトウェアについて、中身を完全に理解しているのは、世界で3人しかいないが、そのひとりだと言われていた。
Fさんのオフィスは、自宅である。
当時から、ホームオフィスでの仕事というのが確立していて、会社のオフィスに出るのは、月に数回ということだった。
ミーティングは電話会議。ソフトウェアでのテストが中心の仕事になるが、それは自宅のPCから会社のサーバへアクセスして使うということで、不都合は全然ない。
Fさんの自宅は、田舎にあるという。
自然に囲まれているそうだ。
あるとき、日本に来たときに、指に包帯を巻いている。
どうしたのかと聞くと、チェーンソーを使っていて、指を引っかけたという。
痛々しい感情が走る。
そのときは大変だったろうなと思う。
Fさんは平気な顔をしている。
また、あるとき、お客様へ行くときに、電車を駅で待っていた。
ちょうど座っていたベンチから、六甲の山並みが見える。
しばらく、その山々を二人で並んで見ている。
自宅の周りの山を思い出しているのかと思いきや、
Who owns those mountains?
「あの山は誰のものなにか」
そういう質問が来ることは、予想もしていなかった。
自分でもいままで考えたり、調べたりすることもなかった。
日本人の発想と違うね。


技術者は、専門分野におけるスペシャリストである。
当然その道一筋という人たちなので、お客様を訪問し、技術的なプレゼンテーションをすると、ほとんどの場合、お客様の評価が高く、お客様は満足される。
彼らは、大学の研究室にいる研究者ではなく、企業の中で、ある製品を売るための技術者であるので、営業的なセンスを持っているのは、当然と言えば、当然であるが、いつも思ったのは、もしも同じような技術レベルを持っている日本人の場合は、どうだろうか、ということである。
技術的には素晴らしいスキルや経験を持っていても、お客様に対しては、持っている技術力をしっかりと見てもらい、理解してもらうことができるだろうか、と考えると、意外とそれができない、日本人技術者が多い。
アメリカでは、幼い頃から、なにごとでも自分をしっかりと説明する、自己主張するという習慣が身についている。日本では、自己主張というのは、往々にして評価されない場合が多い。
そういう背景もあるのかもしれない。
アメリカの技術者たちは、どんな高い技術や経験を持っていても、それを相手に対して、評価されないと意味がないということが、体に染みついているように感じることが多かった。
その中のひとりに、Fさんがいた。
Fさんは、ある専門的なソフトウェアについて、中身を完全に理解しているのは、世界で3人しかいないが、そのひとりだと言われていた。
Fさんのオフィスは、自宅である。
当時から、ホームオフィスでの仕事というのが確立していて、会社のオフィスに出るのは、月に数回ということだった。
ミーティングは電話会議。ソフトウェアでのテストが中心の仕事になるが、それは自宅のPCから会社のサーバへアクセスして使うということで、不都合は全然ない。
Fさんの自宅は、田舎にあるという。
自然に囲まれているそうだ。
あるとき、日本に来たときに、指に包帯を巻いている。
どうしたのかと聞くと、チェーンソーを使っていて、指を引っかけたという。
痛々しい感情が走る。
そのときは大変だったろうなと思う。
Fさんは平気な顔をしている。
また、あるとき、お客様へ行くときに、電車を駅で待っていた。
ちょうど座っていたベンチから、六甲の山並みが見える。
しばらく、その山々を二人で並んで見ている。
自宅の周りの山を思い出しているのかと思いきや、
Who owns those mountains?
「あの山は誰のものなにか」
そういう質問が来ることは、予想もしていなかった。
自分でもいままで考えたり、調べたりすることもなかった。
日本人の発想と違うね。

