僕の先輩Mさんのこと(2)
- 2015/04/30
- 00:00
Mさんは、僕が仕事を始めたときに、最初に配属された部署の1年先輩だ。
1年先輩と言っても、入社が1年前というだけで、学位を持って入社されていたので、年齢は、5歳くらい上のはずだ。
入社2年目に大きな解析の仕事を任された。
それは、社内でもコンピュータを使った初めてという規模の大きな計算だった。
案の定、社内でも経験者がいないので、随分苦労した。
コンピュータにデータを入れれば簡単に答えるが出てくるというものではない。
当時は、利用者に親切なシステムというものはない。
特に未経験者には厳しかった。
あるソフトウェアでも、それを提供している会社の技術者に質問を投げるとしても、いまのようにメールもない。電話で聞くことになるが、それにしても、まず自分で、マニュアルをすべて調べてからでないと、対応してくれないような雰囲気があった。
分かっていない奴は、ソフトウェアも使うな、という雰囲気だ。
今とは全く違う。
なかなか答えが出てこないなかで、課長からはこっぴどく、怒られる。
社内でも計算機を使うのに、お金がかかる。
それが結構高いのだ。
社外に出ていくお金ではないけど、事業部制なので、事業部から出て行くお金は、事業部の貴重な予算を使うわけだ。
そんなときに、僕を元気づけてくれたのが、Mさんである。
Mさんは、たまたま僕の高校の先輩でもあったので、僕自身は親近感を持って、話をしていた。
課長から叱責を受ける僕に、心配しなくていい、君が出した結果を使って、必ずいい成果を出すようにするから、と励ましてくれた。
僕よりも数段も能力もあり、懐の広いMさんだった。
そのとき取り組んでいたのは、新しい試みの構造案が適用される製品であり、その新製品の設計に計算結果が役に立つということだ。Mさんが計算結果を活用してくれるのだ。
そんなMさんとは、別の事業部へMさんが異動してからは、全く音信不通になってしまった。Mさんと再会するまでに、30年以上が経っている。
正確に計算してみると、33年振りだった。
メールのやりとりの後、僕は同僚とMさんがおられる工場に向かった。
大阪の都会からすると、工場のある場所は、田舎である。
敷地も広い。
ローカル線の駅を降りると、すぐ横が工場である。
と言っても正門までは、そこそこ歩かないといけない。
僕ははじめての訪問である。
一緒に来ている同僚は、何度か来ている。
正門で会社名と名前を告げると、守衛の人の対応が変わる。
すでに僕の名前が登録されている。
バッチを渡されるが、同僚の話では、明らかに以前とは違うバッチだという。
これでは、お客さま待遇である。
しかもVIPということになっている。
Mさんのおられる建屋を聞いて、二人で歩いて行く。
建屋に入り、受付で名前を告げると、部屋に通される。
大きな部屋だ。部門長以上が全員入る会議ができそうだ。
やや胸が高鳴る。
33年ぶりかと考える。
どんな感じでMさんは入ってくるのだろう。

1年先輩と言っても、入社が1年前というだけで、学位を持って入社されていたので、年齢は、5歳くらい上のはずだ。
入社2年目に大きな解析の仕事を任された。
それは、社内でもコンピュータを使った初めてという規模の大きな計算だった。
案の定、社内でも経験者がいないので、随分苦労した。
コンピュータにデータを入れれば簡単に答えるが出てくるというものではない。
当時は、利用者に親切なシステムというものはない。
特に未経験者には厳しかった。
あるソフトウェアでも、それを提供している会社の技術者に質問を投げるとしても、いまのようにメールもない。電話で聞くことになるが、それにしても、まず自分で、マニュアルをすべて調べてからでないと、対応してくれないような雰囲気があった。
分かっていない奴は、ソフトウェアも使うな、という雰囲気だ。
今とは全く違う。
なかなか答えが出てこないなかで、課長からはこっぴどく、怒られる。
社内でも計算機を使うのに、お金がかかる。
それが結構高いのだ。
社外に出ていくお金ではないけど、事業部制なので、事業部から出て行くお金は、事業部の貴重な予算を使うわけだ。
そんなときに、僕を元気づけてくれたのが、Mさんである。
Mさんは、たまたま僕の高校の先輩でもあったので、僕自身は親近感を持って、話をしていた。
課長から叱責を受ける僕に、心配しなくていい、君が出した結果を使って、必ずいい成果を出すようにするから、と励ましてくれた。
僕よりも数段も能力もあり、懐の広いMさんだった。
そのとき取り組んでいたのは、新しい試みの構造案が適用される製品であり、その新製品の設計に計算結果が役に立つということだ。Mさんが計算結果を活用してくれるのだ。
そんなMさんとは、別の事業部へMさんが異動してからは、全く音信不通になってしまった。Mさんと再会するまでに、30年以上が経っている。
正確に計算してみると、33年振りだった。
メールのやりとりの後、僕は同僚とMさんがおられる工場に向かった。
大阪の都会からすると、工場のある場所は、田舎である。
敷地も広い。
ローカル線の駅を降りると、すぐ横が工場である。
と言っても正門までは、そこそこ歩かないといけない。
僕ははじめての訪問である。
一緒に来ている同僚は、何度か来ている。
正門で会社名と名前を告げると、守衛の人の対応が変わる。
すでに僕の名前が登録されている。
バッチを渡されるが、同僚の話では、明らかに以前とは違うバッチだという。
これでは、お客さま待遇である。
しかもVIPということになっている。
Mさんのおられる建屋を聞いて、二人で歩いて行く。
建屋に入り、受付で名前を告げると、部屋に通される。
大きな部屋だ。部門長以上が全員入る会議ができそうだ。
やや胸が高鳴る。
33年ぶりかと考える。
どんな感じでMさんは入ってくるのだろう。
