イボマイマイ先生
- 2015/05/08
- 00:00
中学校の生物の先生。生徒たちがつけたあだ名は、イボマイマイである。
独特の風貌だ。
一度見たら忘れることは難しい。
髪の毛は短髪である。
頭にイボがある。
あだ名の由来だ。
あだ名の下半分のマイマイは、貝の呼び名から来ている。
貝の研究では、ある程度、名前が知られている。
なにしろ、自分で新種を発見して、名前をつけた。
風貌はおよそ先生らしくない。
イボマイマイ先生が、もうすこし学者らしく見えていれば、このようなあだ名はついていなかったかもしれない。
もしも他校との喧嘩とかあれば、イボマイマイ先生がでていくだけで、その場は収まったかもしれない。
ただ、イボマイマイ先生は、体育会系ではない。
声はドスが効いているが、体力はないに違いない。
やはりそういう場面では、ギロリと睨んで、多くを語らんほうがいい。
眼光は鋭いので、眼鏡越しに睨まれると、相手校の連中もひるむだろう。
イボマイマイ先生の授業は、独特である。
科目は生物なので、話をしている内容は、生物に関するものであるが、実践派というか、自分が研究しているテーマが中心になる。
教科書を丁寧に解説するタイプの授業ではない。
ときどき、ものを持ち込む。
貝の標本を持ち込んでの講義は、面白いが、どうしても自慢話に聞こえてしまう。
まず中学1年生の授業。初めが肝心だ。
貝の標本から始める。
イボマイマイ先生の決め球を初球に投ずるのだ。
そこで、先生に引き込まれる、惚れ込む生徒も出てくる。
そういう連中は、クラブは、生物部に入ることになる。
毎年、人数は少ないが生物部に新人が入ってくるのは、イボマイマイ先生のお陰である。
ユニークなのは試験問題である。
年5回の試験がある。中間試験が2回と期末試験が3回だ。
3学期は短いので、期末試験だけだ。
学校の通知簿には、試験の点数がそのまま百点満点で記載される。
赤点、60点以下は、まさに赤字で通知簿に記載される。
試験のときばかりは、悪口を言っていた連中も、落とされると大変なので、試験を真剣に受けることになる。
イボマイマイ先生の試験のユニークさは、問題数が少ないことだ。
筆記式だけである。
○○について記述せよ。
問題はこれだけだ。
これだと試験問題を作るのに時間がかからない。
1枚の試験問題に、せいぜい5-6個の問題しかない。
回答方法はひたすら、余白を埋めることだ。
初めのころは、真面目に分かっていること、正しいことだけを書いていた。
そのうち、余白が少ないほうが点数が高くなる、という話が生徒の間でささやかれる。
とにかく、余白を減らせ。
なんでもいいから書いていけ。
イボマイマイは、ろくに読んでいないぞ。
読みにくいように、鉛筆で書いた後、手でなぞって、ぼやかしたほうがいい。
と段々、話がエスカレーションしていく。
最後には、全然分からない問題に、カレーライスの作り方を事細かに小さい字で書いたところ、満点だったという話が聞こえてきた。
これでは“どくとるマンボウ”も真っ青である。
真偽の程は、さだかではない。
生物の授業は、高校では別の先生に変わる。おそらく校長先生方もイボマイマイ先生の適材適所が分かっていたのだろう。
僕にとっては、大学受験科目でもなかったので、中学時代だけの生物だったが、すくなくともギフチョウを教えて頂いたことは、一生の思い出である。

独特の風貌だ。
一度見たら忘れることは難しい。
髪の毛は短髪である。
頭にイボがある。
あだ名の由来だ。
あだ名の下半分のマイマイは、貝の呼び名から来ている。
貝の研究では、ある程度、名前が知られている。
なにしろ、自分で新種を発見して、名前をつけた。
風貌はおよそ先生らしくない。
イボマイマイ先生が、もうすこし学者らしく見えていれば、このようなあだ名はついていなかったかもしれない。
もしも他校との喧嘩とかあれば、イボマイマイ先生がでていくだけで、その場は収まったかもしれない。
ただ、イボマイマイ先生は、体育会系ではない。
声はドスが効いているが、体力はないに違いない。
やはりそういう場面では、ギロリと睨んで、多くを語らんほうがいい。
眼光は鋭いので、眼鏡越しに睨まれると、相手校の連中もひるむだろう。
イボマイマイ先生の授業は、独特である。
科目は生物なので、話をしている内容は、生物に関するものであるが、実践派というか、自分が研究しているテーマが中心になる。
教科書を丁寧に解説するタイプの授業ではない。
ときどき、ものを持ち込む。
貝の標本を持ち込んでの講義は、面白いが、どうしても自慢話に聞こえてしまう。
まず中学1年生の授業。初めが肝心だ。
貝の標本から始める。
イボマイマイ先生の決め球を初球に投ずるのだ。
そこで、先生に引き込まれる、惚れ込む生徒も出てくる。
そういう連中は、クラブは、生物部に入ることになる。
毎年、人数は少ないが生物部に新人が入ってくるのは、イボマイマイ先生のお陰である。
ユニークなのは試験問題である。
年5回の試験がある。中間試験が2回と期末試験が3回だ。
3学期は短いので、期末試験だけだ。
学校の通知簿には、試験の点数がそのまま百点満点で記載される。
赤点、60点以下は、まさに赤字で通知簿に記載される。
試験のときばかりは、悪口を言っていた連中も、落とされると大変なので、試験を真剣に受けることになる。
イボマイマイ先生の試験のユニークさは、問題数が少ないことだ。
筆記式だけである。
○○について記述せよ。
問題はこれだけだ。
これだと試験問題を作るのに時間がかからない。
1枚の試験問題に、せいぜい5-6個の問題しかない。
回答方法はひたすら、余白を埋めることだ。
初めのころは、真面目に分かっていること、正しいことだけを書いていた。
そのうち、余白が少ないほうが点数が高くなる、という話が生徒の間でささやかれる。
とにかく、余白を減らせ。
なんでもいいから書いていけ。
イボマイマイは、ろくに読んでいないぞ。
読みにくいように、鉛筆で書いた後、手でなぞって、ぼやかしたほうがいい。
と段々、話がエスカレーションしていく。
最後には、全然分からない問題に、カレーライスの作り方を事細かに小さい字で書いたところ、満点だったという話が聞こえてきた。
これでは“どくとるマンボウ”も真っ青である。
真偽の程は、さだかではない。
生物の授業は、高校では別の先生に変わる。おそらく校長先生方もイボマイマイ先生の適材適所が分かっていたのだろう。
僕にとっては、大学受験科目でもなかったので、中学時代だけの生物だったが、すくなくともギフチョウを教えて頂いたことは、一生の思い出である。
