君の駅はどこだっけ
- 2015/06/22
- 00:00
大阪の一番古い地下鉄の路線が御堂筋線だ。
僕が勤めていたIT関連会社は、本町駅にあった。
会社の連中と飲み会があると、帰りは、同じ方向に帰る同僚たちと御堂筋線に乗ることが多い。
いつも一緒になる新人の女の子がいた。
オフィスは一緒だけど、世代がかなり違う。
地下鉄の中での短い時間のなかでの会話となると限られてくる。
「君はどこまで帰るのかな」と無難な会話が定番となる。
僕は本町から2駅の梅田で降りるので、それほど長い時間一緒にいるわけではない。
お酒も入っているので、半分記憶も飛んでいたのに違いない。
いつも同じ質問をしていたらしい。
らしいというのは、僕の中では、あまり記憶がないのである。
質問をしようとしてから、僕の記憶の中に、彼女の回答がよみがえってきた。
今度は別の質問に変わった。
「君は、江坂まで帰るのだったね」と、質問のレベルがあがったのである。
ところが思わぬ答えが返ってきた。
「いえ。私は桃山台です」
怒っているように聞こえる。
「えっ、この前、江坂って言ってたでしょ」
そうだ。僕は確かに彼女の回答を覚えている。
「あのときは、何度も同じ質問をして、何度言っても覚えてくれないので、嘘を言ったのです」
彼女の話では、僕は同じ質問を3回したと言う。
3回とも正しい答えを言ったのに、全然僕が覚えていないものだから、4回目に同じ質問を受けたとき、さすがの彼女も堪忍袋の緒が切れた、というわけだ。
4回目の答えは、別の駅の名前を言ったのである。
そして、僕はそれを覚えていたのだ。
聞いたほうは、覚えていないのに、言ったほうは、しっかりと覚えているということは、しばしば起こることだ。
僕自身も、講習会での講師をやっているときに、同じことを経験している。
そのときは、何度も同じところを説明したのに、最後にそのことについて、まるで初めて聞くように、質問してくる人がいた。
話したほうはしっかりと覚えているが、聞いている方は、ほとんど記憶に残っていないということだ。
講習会では、質問は1回目であるのに、地下鉄では、僕は、同じ質問を4回しているのだから、僕のほうが分が悪いかもしれない。
質問をするときは、こころしてしなければいけないのである。
聞いたほうが答えを忘れているが、答えた方が覚えているのである。
おっ、また同じ質問が来たってね。

僕が勤めていたIT関連会社は、本町駅にあった。
会社の連中と飲み会があると、帰りは、同じ方向に帰る同僚たちと御堂筋線に乗ることが多い。
いつも一緒になる新人の女の子がいた。
オフィスは一緒だけど、世代がかなり違う。
地下鉄の中での短い時間のなかでの会話となると限られてくる。
「君はどこまで帰るのかな」と無難な会話が定番となる。
僕は本町から2駅の梅田で降りるので、それほど長い時間一緒にいるわけではない。
お酒も入っているので、半分記憶も飛んでいたのに違いない。
いつも同じ質問をしていたらしい。
らしいというのは、僕の中では、あまり記憶がないのである。
質問をしようとしてから、僕の記憶の中に、彼女の回答がよみがえってきた。
今度は別の質問に変わった。
「君は、江坂まで帰るのだったね」と、質問のレベルがあがったのである。
ところが思わぬ答えが返ってきた。
「いえ。私は桃山台です」
怒っているように聞こえる。
「えっ、この前、江坂って言ってたでしょ」
そうだ。僕は確かに彼女の回答を覚えている。
「あのときは、何度も同じ質問をして、何度言っても覚えてくれないので、嘘を言ったのです」
彼女の話では、僕は同じ質問を3回したと言う。
3回とも正しい答えを言ったのに、全然僕が覚えていないものだから、4回目に同じ質問を受けたとき、さすがの彼女も堪忍袋の緒が切れた、というわけだ。
4回目の答えは、別の駅の名前を言ったのである。
そして、僕はそれを覚えていたのだ。
聞いたほうは、覚えていないのに、言ったほうは、しっかりと覚えているということは、しばしば起こることだ。
僕自身も、講習会での講師をやっているときに、同じことを経験している。
そのときは、何度も同じところを説明したのに、最後にそのことについて、まるで初めて聞くように、質問してくる人がいた。
話したほうはしっかりと覚えているが、聞いている方は、ほとんど記憶に残っていないということだ。
講習会では、質問は1回目であるのに、地下鉄では、僕は、同じ質問を4回しているのだから、僕のほうが分が悪いかもしれない。
質問をするときは、こころしてしなければいけないのである。
聞いたほうが答えを忘れているが、答えた方が覚えているのである。
おっ、また同じ質問が来たってね。
