Rさんのこと(1)
- 2015/06/28
- 00:00
Rさんは、IT会社時代のパートナーさんのひとりだ。
熱血漢の技術者だった。
僕は当時、あるソフトウェアの技術営業的な立場だった。
Rさんは、そのソフトウェアの開発会社の日本法人に勤めていた。
同じソフトウェアを販売する仲間というのは、つながりが強い。
ソフトウェアというのは、ある種、宗教的なところがあり、そのソフトウェアに心底惚れていないと売れるものではない。
またソフトウェアをマスターすることもできない。
僕の会社では、そのソフトウェアを販売・支援するためにいくつかのパートナー会社と契約をしていた。
それらのパートナー会社の技術者を育成するのが、僕の仕事のひとつだった。
年に2回くらい、集中講義をやっていた。
ある週の月曜日の朝から週末の金曜日の夕方まで、講義と実習を連続して行うのだ。
契約しているパートーナー会社から技術者が15名くらい参加していた。
講師は、Rさんが担当している。
その週は、毎日、深夜、早朝でもその部屋に入ることができるように、受講者にはセキュリティ用のカードを渡していた。
当時は、今のようなPCでなんでもできる時代ではない。
そのソフトウェアを動かすには、大きなワークステーションという機械を使っていた。
ワークステーションは、実習室にしか置いていない。
実習室でないと、そのソフトウェアを動かすことはできないのである。
月曜日に出された課題は、金曜日までに終わらないといけない。
朝9時に出てきて、17時に終わって帰るというようなやりかたでは、とても終えることはできないのだ。
毎日遅くまでやらないといけない。
通常午前中は、Rさんが講義をして、午後から実習というパターンが多かった。
ある日のことだ。
Rさんが一生懸命、講義をしている。
と、受講生の一人が居眠りを始めた。
Rさんは初めは、黙認していたが、起きる気配がないので、居眠りをしている若い受講生に起きるように注意した。
すると居眠りをしていた受講生は、目をさましたのであるが、罰が悪かったのか、怒ったような表情でRさんを睨んでいる。
休憩時間になって、その居眠り坊主は、Rさんに、みんなの前で恥をかかされたことに腹が立ったのか、Rさんに文句を言ったのである。
なにもみんなの前で、注意しなくてもいいではないかと、まさに逆切れである。
Rさんは、分かりました、では一緒にきてくださいと、彼を地下の食堂まで連れて行った。
当時は、まだ携帯電話などない時代だ。
地下の食堂には、公衆電話が置いてある。
Rさんは、彼から会社の電話番号を聞くと、彼の上司に電話したのである。
居眠りをした彼が問題なのか、それを注意したRさんが問題なのか、彼の上司に判断してもらおうということだ。
彼は,会社の仕事でこのコースを受講しているのであり、そのときに居眠りをしていた彼に非があるのは、言うまでもない。
彼の上司も同じ考えで、Rさんが正しいことを伝えた。
その後、居眠り君は、逆ギレを反省して、しっかりと講義を聴いて、実習に励んだという。
Rさんは、このような体育会系とも言えるようなところがあるかと思うと、非常に繊細なところもあった。
それは、Rさんが書いている手帳を見せてもらったときのことだ。
(続く)

熱血漢の技術者だった。
僕は当時、あるソフトウェアの技術営業的な立場だった。
Rさんは、そのソフトウェアの開発会社の日本法人に勤めていた。
同じソフトウェアを販売する仲間というのは、つながりが強い。
ソフトウェアというのは、ある種、宗教的なところがあり、そのソフトウェアに心底惚れていないと売れるものではない。
またソフトウェアをマスターすることもできない。
僕の会社では、そのソフトウェアを販売・支援するためにいくつかのパートナー会社と契約をしていた。
それらのパートナー会社の技術者を育成するのが、僕の仕事のひとつだった。
年に2回くらい、集中講義をやっていた。
ある週の月曜日の朝から週末の金曜日の夕方まで、講義と実習を連続して行うのだ。
契約しているパートーナー会社から技術者が15名くらい参加していた。
講師は、Rさんが担当している。
その週は、毎日、深夜、早朝でもその部屋に入ることができるように、受講者にはセキュリティ用のカードを渡していた。
当時は、今のようなPCでなんでもできる時代ではない。
そのソフトウェアを動かすには、大きなワークステーションという機械を使っていた。
ワークステーションは、実習室にしか置いていない。
実習室でないと、そのソフトウェアを動かすことはできないのである。
月曜日に出された課題は、金曜日までに終わらないといけない。
朝9時に出てきて、17時に終わって帰るというようなやりかたでは、とても終えることはできないのだ。
毎日遅くまでやらないといけない。
通常午前中は、Rさんが講義をして、午後から実習というパターンが多かった。
ある日のことだ。
Rさんが一生懸命、講義をしている。
と、受講生の一人が居眠りを始めた。
Rさんは初めは、黙認していたが、起きる気配がないので、居眠りをしている若い受講生に起きるように注意した。
すると居眠りをしていた受講生は、目をさましたのであるが、罰が悪かったのか、怒ったような表情でRさんを睨んでいる。
休憩時間になって、その居眠り坊主は、Rさんに、みんなの前で恥をかかされたことに腹が立ったのか、Rさんに文句を言ったのである。
なにもみんなの前で、注意しなくてもいいではないかと、まさに逆切れである。
Rさんは、分かりました、では一緒にきてくださいと、彼を地下の食堂まで連れて行った。
当時は、まだ携帯電話などない時代だ。
地下の食堂には、公衆電話が置いてある。
Rさんは、彼から会社の電話番号を聞くと、彼の上司に電話したのである。
居眠りをした彼が問題なのか、それを注意したRさんが問題なのか、彼の上司に判断してもらおうということだ。
彼は,会社の仕事でこのコースを受講しているのであり、そのときに居眠りをしていた彼に非があるのは、言うまでもない。
彼の上司も同じ考えで、Rさんが正しいことを伝えた。
その後、居眠り君は、逆ギレを反省して、しっかりと講義を聴いて、実習に励んだという。
Rさんは、このような体育会系とも言えるようなところがあるかと思うと、非常に繊細なところもあった。
それは、Rさんが書いている手帳を見せてもらったときのことだ。
(続く)
