あれはなに川だった?
- 2015/07/10
- 00:00
大学生の頃だ。
僕の親友が、海外旅行から帰ってくるときに、羽田空港まで迎えに行った。
彼は、以前ブログで書いたことがある。
N君だ。
僕がランボーの詩集を買うようにそそのかしたW君を知ったのもN君を通じてである。
N君とは、中学から高校まで6年間、同じ学校に通っていた。
中学は同じクラスだった。
いつもN君のアパートの部屋は、仲間が集まる場となっていた。
集まる仲間のほとんどはN君と同じ大学だった。
僕だけが例外だったのだが、なぜかN君の級友には、波長が合うメンバーが多かった。
今、考えるとそれぞれが個性的なメンバーがいた。
そういう異質な仲間が集まるところも、僕にとっては魅力があったのだろう。
N君は、両親が海外で仕事をされていて、N君はひとり東京に住んでいた。
ただ親戚のおばさんが近所にいて、N君は、しばしばおばさんの家に顔を出していた。
随分気さくなおばさんで、僕も食事に呼ばれたり、あるときは、パートの仕事を手伝ったりしたこともあった。
若い学生の気持ちが分かるおばさんだった。
おばさんのところには、男の子が二人いた。
二人とも小学生だった。
二人の男の子も、N君にはよくなついていた。
僕もいれて一緒に野球をしたこともあったね。
N君の海外旅行は、両親のもとへ夏休みの期間だけ帰るというものだった。
僕自身もちょうど同じ環境で、両親が海外にいたので、二人の間には、気持ちが通じるところがあった。
そのおばさんも、甥っ子と同じ境遇の僕を、甥っ子と同じように見ていたのかもしれない。
日本に帰国するN君を、おばさんと子供たちと、羽田に迎えに行くことになった。
当時は、今と違い、まだまだ海外旅行というのは、身近でなかった。
その分、出発のときや帰国のときに、空港へ見送りに行ったり、迎えに行くということが多かったようだ。
おばさんは車を運転して羽田まで来た。
僕も一緒に乗せてもらう。
総勢4名の出むかえだ。
無事N君が羽田に着く。
荷物を車のトランクに入れる。
おばさんの車は,おばさんの家に向かって走り出す。
まず、おばさんの家で風呂に入って、食事ということになるのだろう。
羽田空港を出ると、道路は都心に向かう。
川が車の左手を流れている。
なぜか、この会話だけが、今でも僕の頭のなかに残っている。
N君の年長の甥っ子が、N君の海外の土産話しを遮るように言う。
「ねえねえ、この川は何という川か、知っている?」と助手席に座っているN君へ話しかける。
N君は、突然の質問にびっくりしながらも真剣に考える。
「なんという川だったかなぁ」と、甥っ子の顔を振り返ってみる。
答えが出てこない。
甥っ子が自慢げに言い放った。
「これはね、ひだりがわっていうのだよ」。
確かに川は道の左側を流れている。
ダジャレだ。
きっと、大好きなお兄ちゃんが帰国したら、いの一番に言ってやろうと考えていたに違いない。
車の中が爆笑に包まれる。

僕の親友が、海外旅行から帰ってくるときに、羽田空港まで迎えに行った。
彼は、以前ブログで書いたことがある。
N君だ。
僕がランボーの詩集を買うようにそそのかしたW君を知ったのもN君を通じてである。
N君とは、中学から高校まで6年間、同じ学校に通っていた。
中学は同じクラスだった。
いつもN君のアパートの部屋は、仲間が集まる場となっていた。
集まる仲間のほとんどはN君と同じ大学だった。
僕だけが例外だったのだが、なぜかN君の級友には、波長が合うメンバーが多かった。
今、考えるとそれぞれが個性的なメンバーがいた。
そういう異質な仲間が集まるところも、僕にとっては魅力があったのだろう。
N君は、両親が海外で仕事をされていて、N君はひとり東京に住んでいた。
ただ親戚のおばさんが近所にいて、N君は、しばしばおばさんの家に顔を出していた。
随分気さくなおばさんで、僕も食事に呼ばれたり、あるときは、パートの仕事を手伝ったりしたこともあった。
若い学生の気持ちが分かるおばさんだった。
おばさんのところには、男の子が二人いた。
二人とも小学生だった。
二人の男の子も、N君にはよくなついていた。
僕もいれて一緒に野球をしたこともあったね。
N君の海外旅行は、両親のもとへ夏休みの期間だけ帰るというものだった。
僕自身もちょうど同じ環境で、両親が海外にいたので、二人の間には、気持ちが通じるところがあった。
そのおばさんも、甥っ子と同じ境遇の僕を、甥っ子と同じように見ていたのかもしれない。
日本に帰国するN君を、おばさんと子供たちと、羽田に迎えに行くことになった。
当時は、今と違い、まだまだ海外旅行というのは、身近でなかった。
その分、出発のときや帰国のときに、空港へ見送りに行ったり、迎えに行くということが多かったようだ。
おばさんは車を運転して羽田まで来た。
僕も一緒に乗せてもらう。
総勢4名の出むかえだ。
無事N君が羽田に着く。
荷物を車のトランクに入れる。
おばさんの車は,おばさんの家に向かって走り出す。
まず、おばさんの家で風呂に入って、食事ということになるのだろう。
羽田空港を出ると、道路は都心に向かう。
川が車の左手を流れている。
なぜか、この会話だけが、今でも僕の頭のなかに残っている。
N君の年長の甥っ子が、N君の海外の土産話しを遮るように言う。
「ねえねえ、この川は何という川か、知っている?」と助手席に座っているN君へ話しかける。
N君は、突然の質問にびっくりしながらも真剣に考える。
「なんという川だったかなぁ」と、甥っ子の顔を振り返ってみる。
答えが出てこない。
甥っ子が自慢げに言い放った。
「これはね、ひだりがわっていうのだよ」。
確かに川は道の左側を流れている。
ダジャレだ。
きっと、大好きなお兄ちゃんが帰国したら、いの一番に言ってやろうと考えていたに違いない。
車の中が爆笑に包まれる。
