消しゴムで書くラブレター
- 2015/07/18
- 00:00
安部公房さんの本を買ったことがある。
文学全集のひとつの巻が安部公房さんだった。
学生のころは、妙に難解な文章にひとりで酔って、訳も分からず粋がっていたことがあった。
安部公房さんの小説も、きっと意味も分からずに、読んでいたのだ。
大学生の頃だ。
大江健三郎さんの小説もそうだった。
途中から分からなくなってくる。
それは“万延元年のフットボール”くらいからだ。
でも安部公房さんの全集のなかで読んだ文章で、いまだに覚えているものがある。
原文はきっと随分違っているだろうけど、それは、僕のなかではこうなっている。
ある男に好きな女性がいる。
ラブレターなるものを書いている。
自分の気持ちをひとつひとつ書いていく。
どんどん気持が熱くなっていく。
もう書ききれないくらいに気持が昂揚する。
もうこれ以上、僕の気持ちは書けません。
ここから後は、消しゴムで書きます。
あなたには読めないかもしれません。
でも僕の気持は、どこまでも熱く続いています。

文学全集のひとつの巻が安部公房さんだった。
学生のころは、妙に難解な文章にひとりで酔って、訳も分からず粋がっていたことがあった。
安部公房さんの小説も、きっと意味も分からずに、読んでいたのだ。
大学生の頃だ。
大江健三郎さんの小説もそうだった。
途中から分からなくなってくる。
それは“万延元年のフットボール”くらいからだ。
でも安部公房さんの全集のなかで読んだ文章で、いまだに覚えているものがある。
原文はきっと随分違っているだろうけど、それは、僕のなかではこうなっている。
ある男に好きな女性がいる。
ラブレターなるものを書いている。
自分の気持ちをひとつひとつ書いていく。
どんどん気持が熱くなっていく。
もう書ききれないくらいに気持が昂揚する。
もうこれ以上、僕の気持ちは書けません。
ここから後は、消しゴムで書きます。
あなたには読めないかもしれません。
でも僕の気持は、どこまでも熱く続いています。
