決闘!井の頭公園(1)
- 2015/08/26
- 00:00
学生の頃は、井の頭公園の近くに住んでいたときがある。
引越を繰り返したが、そのアパートには、1年半くらい住んでいた。
いつも行っている、スーパーの横についているスナックがあった。
スナックと言っても、食事と珈琲がメインで、夜はお酒を飲むこともできたが、カウンターだけの全面ガラス張りの店だ。
健康的な店である。
マスターが面倒見の良い人で、特に一人住まいをしている学生には優しかった。
僕もそこで食事をとることが多かった。
現金の持ち合わせがないと、学生につけをさせてくれることもあった。
もともとがN君の紹介で行き始めた。
N君は僕の中学、高校の同窓生だ。
店で働いている若い人たちは、僕よりも3歳から10歳くらい年上の人たちだった。
いつしか、店の人たちとも親しくなった。
店の人たちは、井の頭公園の近くのアパートに住んでいた。
僕の住んでいるアパートからも数分で行ける距離だ。
ときには、一部屋に二人が寝泊まりをしているときもあった。
寮のような使い方だったのかもしれない。
その中の一人のKさんとは妙にウマがあった。
野球は巨人ファンなので、その点では相容れないのだが、そんなことは気にならないところがあった。
Kさんはお酒も飲むが、甘党でもある。
当時、僕はお酒を滅多に飲まなかった。
その年の春のお彼岸のころだ。
スナックでの会話のなかで、おはぎの話題になった。
僕は、その前の年の暮れにデパートでバイトをした。
和菓子の店だ。
デパートの地下にある、その店では、店頭で餅を売り、その場で食べることができる。
餅には、きなこや、大根おろし、といういくつかのメニューがあり、餅をお椀にいれて、そこに、きなこをかけたり、大根おろしをかけたりするのだ。
注文したお客は、立ち食いで食べていく。
すぐに食べられるので、回転率もいい。
休日になると、時間帯によっては、超多忙を極めるような繁盛振りだった。
そこでは、立食以外にも、もちろん通常の和菓子も売っている。
おはぎが定番の売れ筋商品だ。
僕は、甘い物には目がなかった。
とくに粒あんのおはぎが好物だった。
その話を、Kさんにした。
Kさんもおはぎには、うるさいという。
どのくらい食べたことがあるかという話になった。
年を重ねると、きっと数よりも味になる。
どこそこのおはぎの味がいいとか、それだったら、こちらの店だろうという話になる。
だが、当時は学生である。
おはぎは食べるとしてもせいぜい2,3個でしょう、と僕が言うと、
いやいや、それでは、本当の好物とは言えない、
10個くらいは食べないと本物ではない、とKさん。
段々話が大きくなっていく。
その結果が、次の休みの日に、おはぎの食い合いをしようということになった。
おはぎの真剣勝負だ。
場所は、Kさんのアパートである
(つづく)

引越を繰り返したが、そのアパートには、1年半くらい住んでいた。
いつも行っている、スーパーの横についているスナックがあった。
スナックと言っても、食事と珈琲がメインで、夜はお酒を飲むこともできたが、カウンターだけの全面ガラス張りの店だ。
健康的な店である。
マスターが面倒見の良い人で、特に一人住まいをしている学生には優しかった。
僕もそこで食事をとることが多かった。
現金の持ち合わせがないと、学生につけをさせてくれることもあった。
もともとがN君の紹介で行き始めた。
N君は僕の中学、高校の同窓生だ。
店で働いている若い人たちは、僕よりも3歳から10歳くらい年上の人たちだった。
いつしか、店の人たちとも親しくなった。
店の人たちは、井の頭公園の近くのアパートに住んでいた。
僕の住んでいるアパートからも数分で行ける距離だ。
ときには、一部屋に二人が寝泊まりをしているときもあった。
寮のような使い方だったのかもしれない。
その中の一人のKさんとは妙にウマがあった。
野球は巨人ファンなので、その点では相容れないのだが、そんなことは気にならないところがあった。
Kさんはお酒も飲むが、甘党でもある。
当時、僕はお酒を滅多に飲まなかった。
その年の春のお彼岸のころだ。
スナックでの会話のなかで、おはぎの話題になった。
僕は、その前の年の暮れにデパートでバイトをした。
和菓子の店だ。
デパートの地下にある、その店では、店頭で餅を売り、その場で食べることができる。
餅には、きなこや、大根おろし、といういくつかのメニューがあり、餅をお椀にいれて、そこに、きなこをかけたり、大根おろしをかけたりするのだ。
注文したお客は、立ち食いで食べていく。
すぐに食べられるので、回転率もいい。
休日になると、時間帯によっては、超多忙を極めるような繁盛振りだった。
そこでは、立食以外にも、もちろん通常の和菓子も売っている。
おはぎが定番の売れ筋商品だ。
僕は、甘い物には目がなかった。
とくに粒あんのおはぎが好物だった。
その話を、Kさんにした。
Kさんもおはぎには、うるさいという。
どのくらい食べたことがあるかという話になった。
年を重ねると、きっと数よりも味になる。
どこそこのおはぎの味がいいとか、それだったら、こちらの店だろうという話になる。
だが、当時は学生である。
おはぎは食べるとしてもせいぜい2,3個でしょう、と僕が言うと、
いやいや、それでは、本当の好物とは言えない、
10個くらいは食べないと本物ではない、とKさん。
段々話が大きくなっていく。
その結果が、次の休みの日に、おはぎの食い合いをしようということになった。
おはぎの真剣勝負だ。
場所は、Kさんのアパートである
(つづく)
