骨を折る(4)
- 2015/10/14
- 00:00
ギブスをショートブーツ型に変えたので、随分動きやすくなった。
大きさだけではなく、ギブス自身の重さも軽くなっているのだ。
風呂に入るのも、いままでと同じようにビニール袋で患部にお湯が入らないようにするところは同じだ。
風呂の中では,体を洗うときに、椅子に座るのだが、今まで使っていたものでは椅子の高さが低いので、もっと高い椅子に変えた。
こういう椅子に座ると楽に体を洗える。
右足は、ビニール袋に守られている。
浴槽に入るときは、右足をお湯の中に浸けることはできないので、お湯の上に出した状態で、体をお湯のなかに沈める。
このときに役に立つのが、浴槽の周りの手すりである。
もともとは介護が必要な人のために付けられているものかもしれないが、役に立つ。
風呂の中は、すべることも多いので、こういう備品が付けられることになったのだろうが、健康な状態ではほとんど使わないものが、自分が正常でない状態になって、初めてその有効性に気がつくものである。
ギブスをはめて2週間以上たっている。
その間風呂に入ってはいるが、右足を洗うことはできない。
ギブスを交換するときに、看護士さんに丁寧に洗ってもらったのだが、それ1回だけだ。
段々季節も温かくなってくる。
ここで問題になるのは、足のかゆみだ。
患部のあたりがかゆくなるのだ。
むき出しにして思い切り掻きたい衝動に襲われる。
我慢できないので、ギブスの隙間から、プラスチックの定規を入れて、かゆいところを掻くことにした。
30cmの定規を出し入れして、上下動させて掻くのである。
これが気持がよいのである。
あまり掻きすぎて傷をつけてはいけないので、ゆっくりと手加減をしながら定規を動かす。
そんなことをしながら2週間が過ぎる。
骨折をしてから1ヶ月目だ。
再び先生に会いに行く。
予約は前回きっちりと入れてある。
先生は、それではギブスを取りましょうと言われる。
1日でも早くギブスを取ってもらいたい僕としては、うれしいことだ。
今度は、椅子に座ったまま、先生が電動カッターを操作する。
電動カッターのスイッチが入る。
ブィーンという大きな音が鳴り始める。
前回は、ベッドにうつぶせの状態でギブスを切ってもらったので、僕の目には電動カッターの動きは入っていない。
今回は、目の前で電動カッターが猛烈な音を立てながら廻っている。
先生がしっかりと体勢を整えて、ギブスに回転部をあてる。
電動カッターは、回転しているので、少し油断すると、電動カッターの刃が間違った方向にぶれることもあるのではないかと心配になる。
深く切りすぎても、ギブスを通り越して、足を傷つけることもあるかもしれない。
患者にとっては、恐ろしい作業だ。
先生はいとも簡単に作業を進め、無事ギブスが外された。
前回は、少し色白になった、僕の右足が現れたのであるが、今、僕の目の前に現れた右足は、ひどい状況だ。
足全体の色がかわり、緑色だ。
しかも表面の皮膚がふにゃふにゃしている。
これはなんや、と先生も驚いた表情を見せる。
それでも看護士さんは、お湯でもって、この醜い足を丁寧に洗ってくれる。
多少はましになってきた。
先生は、皮膚科に行ってください、と指示を出す。
こういうところは総合病院のよいところだ。
すぐに皮膚科に行く。
皮膚科ではほとんど待ち時間もなく、担当の先生が診てくれる。
僕の足を診るなり、水虫でしょうと言う。
調べますからと、僕の足の表面のただれた部分を取って、検査に回す。
結果は、診察室の中で待っているとすぐにやってきた。
今度は、よりはっきりと言われる。
「やはり、水虫です」
看護士さんが右足に塗り薬を付けてくれる。
「薬を出しますから、毎日つけてください」と担当の皮膚科の先生。
再び整形外科に戻る。
もう一度2週間後に来てくださいと、言われる。
おそらくそれが今回の怪我では最後の診断になるのだろう。
まさに、担当の先生の見立て通りのスケジュールで完治に向かっている。
水虫になったのは、風呂に入ったときに、ビニール袋の上の部分からお湯が入ったのだろう。
患部に水がたまり、温かくなってきたこともあり、ちょうど水虫にとっては、一番よい環境ができたに違いない。
きっと定規で掻いていたころに、水虫はどんどん勢力範囲を広げていたのだろう。
今日からは、風呂に入っても、右足も思う存分洗うことができる。
水虫は、塗り薬がすぐに効いて、1週間もすると完全に元通りに戻った。
たちの悪い水虫の話を聞くことがあるが、それはもっと根の深いものなのだろう。
今回の水虫は、皮膚の表面だけだったので、簡単に治ったに違いない。
元をたどれば、小さな段差の踏み外しが招いた事故であった。
事故の場所は、僕の家のすぐ傍にあるので、今でもそこを通ると、そのときのことを思い出す。
小さな段差でも、気をつけないといけないね。

大きさだけではなく、ギブス自身の重さも軽くなっているのだ。
風呂に入るのも、いままでと同じようにビニール袋で患部にお湯が入らないようにするところは同じだ。
風呂の中では,体を洗うときに、椅子に座るのだが、今まで使っていたものでは椅子の高さが低いので、もっと高い椅子に変えた。
こういう椅子に座ると楽に体を洗える。
右足は、ビニール袋に守られている。
浴槽に入るときは、右足をお湯の中に浸けることはできないので、お湯の上に出した状態で、体をお湯のなかに沈める。
このときに役に立つのが、浴槽の周りの手すりである。
もともとは介護が必要な人のために付けられているものかもしれないが、役に立つ。
風呂の中は、すべることも多いので、こういう備品が付けられることになったのだろうが、健康な状態ではほとんど使わないものが、自分が正常でない状態になって、初めてその有効性に気がつくものである。
ギブスをはめて2週間以上たっている。
その間風呂に入ってはいるが、右足を洗うことはできない。
ギブスを交換するときに、看護士さんに丁寧に洗ってもらったのだが、それ1回だけだ。
段々季節も温かくなってくる。
ここで問題になるのは、足のかゆみだ。
患部のあたりがかゆくなるのだ。
むき出しにして思い切り掻きたい衝動に襲われる。
我慢できないので、ギブスの隙間から、プラスチックの定規を入れて、かゆいところを掻くことにした。
30cmの定規を出し入れして、上下動させて掻くのである。
これが気持がよいのである。
あまり掻きすぎて傷をつけてはいけないので、ゆっくりと手加減をしながら定規を動かす。
そんなことをしながら2週間が過ぎる。
骨折をしてから1ヶ月目だ。
再び先生に会いに行く。
予約は前回きっちりと入れてある。
先生は、それではギブスを取りましょうと言われる。
1日でも早くギブスを取ってもらいたい僕としては、うれしいことだ。
今度は、椅子に座ったまま、先生が電動カッターを操作する。
電動カッターのスイッチが入る。
ブィーンという大きな音が鳴り始める。
前回は、ベッドにうつぶせの状態でギブスを切ってもらったので、僕の目には電動カッターの動きは入っていない。
今回は、目の前で電動カッターが猛烈な音を立てながら廻っている。
先生がしっかりと体勢を整えて、ギブスに回転部をあてる。
電動カッターは、回転しているので、少し油断すると、電動カッターの刃が間違った方向にぶれることもあるのではないかと心配になる。
深く切りすぎても、ギブスを通り越して、足を傷つけることもあるかもしれない。
患者にとっては、恐ろしい作業だ。
先生はいとも簡単に作業を進め、無事ギブスが外された。
前回は、少し色白になった、僕の右足が現れたのであるが、今、僕の目の前に現れた右足は、ひどい状況だ。
足全体の色がかわり、緑色だ。
しかも表面の皮膚がふにゃふにゃしている。
これはなんや、と先生も驚いた表情を見せる。
それでも看護士さんは、お湯でもって、この醜い足を丁寧に洗ってくれる。
多少はましになってきた。
先生は、皮膚科に行ってください、と指示を出す。
こういうところは総合病院のよいところだ。
すぐに皮膚科に行く。
皮膚科ではほとんど待ち時間もなく、担当の先生が診てくれる。
僕の足を診るなり、水虫でしょうと言う。
調べますからと、僕の足の表面のただれた部分を取って、検査に回す。
結果は、診察室の中で待っているとすぐにやってきた。
今度は、よりはっきりと言われる。
「やはり、水虫です」
看護士さんが右足に塗り薬を付けてくれる。
「薬を出しますから、毎日つけてください」と担当の皮膚科の先生。
再び整形外科に戻る。
もう一度2週間後に来てくださいと、言われる。
おそらくそれが今回の怪我では最後の診断になるのだろう。
まさに、担当の先生の見立て通りのスケジュールで完治に向かっている。
水虫になったのは、風呂に入ったときに、ビニール袋の上の部分からお湯が入ったのだろう。
患部に水がたまり、温かくなってきたこともあり、ちょうど水虫にとっては、一番よい環境ができたに違いない。
きっと定規で掻いていたころに、水虫はどんどん勢力範囲を広げていたのだろう。
今日からは、風呂に入っても、右足も思う存分洗うことができる。
水虫は、塗り薬がすぐに効いて、1週間もすると完全に元通りに戻った。
たちの悪い水虫の話を聞くことがあるが、それはもっと根の深いものなのだろう。
今回の水虫は、皮膚の表面だけだったので、簡単に治ったに違いない。
元をたどれば、小さな段差の踏み外しが招いた事故であった。
事故の場所は、僕の家のすぐ傍にあるので、今でもそこを通ると、そのときのことを思い出す。
小さな段差でも、気をつけないといけないね。
