胸にしこり(1)
- 2015/10/20
- 00:00
10年以上前のことだ。
いや20年以上前かもしれない。
それもはっきりしないくらい古い話である。
手の甲にぐりぐりができた。
右手の薬指の付け根に近い部分に直径15mmくらいの球状の膨らみがでてきた。
触ると右に左に動く。
動く場合は、良性だという回りの言葉を信じて、気にしていなかった。
1ヶ月、2ヶ月経ち、一向に消える気配がない。
たまたま友人の町医者と会った時に聞くと、そのうち自然に消えるだろうという。
どうしても気持ち悪ければ、取ることもできると。
そこまでして、体にメスを入れることもないと思い、放っておくことにした。
すると、友人の話のとおり、自然とその膨らみは消えてしまった。
やはり、医者の言うことは、正しいのだと得心した。
後で知ったことだけど、ガングリオンというものだった。
それがあってから、1年くらい経ったころだ。
今度は、左胸のお乳のあたりに、同じようなぐりぐりができた。
同じ医者の友人に聞くと、今度は答えが違う。
切るのがうまいと言われていた、高校同期の医者Y君に診てもらえという。
友人の医者は、予知機能は優れたところがあった。
やばそうという場合は、早めにある程度大きな病院の医者に紹介するのだ。
手のガングリオンと違い、多少はやばい可能性があるのかもしれない、と考えざるを得なかった。
Y君とは、クラスが別だったので、お互いに知ってはいるが、それほど親しい間柄ではない。
ただ、友人の勧めもあったので、Y君に電話をしてみた。
高校卒業後の同窓会で会うことはあっても、直接電話で話をするのは、初めてのことである。
電話で症状を説明した。
すると彼の答えは、“男性にも乳がんがある”という非常に衝撃的なものだった。
一度病院に来いという。
ただ、当時営業で毎日非常に忙しく、彼もそのことを知っていた。
彼が平日勤務している病院は、大学病院で、恐ろしく待ち時間が長いので有名だった。
そこで、土曜日に彼が勤務している個人病院に来いという。
そこならすいているというわけだ。
次の土曜日に、僕は車で30分以上かけて、彼が土曜日に勤務している病院に向かった。
彼は、切るのがうまいということで有名だったので、身体にメスを入れることは、人生初であったが、安心していた。
でも“男性でも乳がん”という言葉が、気になっていた。
土曜日の8時半頃に病院着くと、病院はさすがにがらんとしている。
(つづく)

いや20年以上前かもしれない。
それもはっきりしないくらい古い話である。
手の甲にぐりぐりができた。
右手の薬指の付け根に近い部分に直径15mmくらいの球状の膨らみがでてきた。
触ると右に左に動く。
動く場合は、良性だという回りの言葉を信じて、気にしていなかった。
1ヶ月、2ヶ月経ち、一向に消える気配がない。
たまたま友人の町医者と会った時に聞くと、そのうち自然に消えるだろうという。
どうしても気持ち悪ければ、取ることもできると。
そこまでして、体にメスを入れることもないと思い、放っておくことにした。
すると、友人の話のとおり、自然とその膨らみは消えてしまった。
やはり、医者の言うことは、正しいのだと得心した。
後で知ったことだけど、ガングリオンというものだった。
それがあってから、1年くらい経ったころだ。
今度は、左胸のお乳のあたりに、同じようなぐりぐりができた。
同じ医者の友人に聞くと、今度は答えが違う。
切るのがうまいと言われていた、高校同期の医者Y君に診てもらえという。
友人の医者は、予知機能は優れたところがあった。
やばそうという場合は、早めにある程度大きな病院の医者に紹介するのだ。
手のガングリオンと違い、多少はやばい可能性があるのかもしれない、と考えざるを得なかった。
Y君とは、クラスが別だったので、お互いに知ってはいるが、それほど親しい間柄ではない。
ただ、友人の勧めもあったので、Y君に電話をしてみた。
高校卒業後の同窓会で会うことはあっても、直接電話で話をするのは、初めてのことである。
電話で症状を説明した。
すると彼の答えは、“男性にも乳がんがある”という非常に衝撃的なものだった。
一度病院に来いという。
ただ、当時営業で毎日非常に忙しく、彼もそのことを知っていた。
彼が平日勤務している病院は、大学病院で、恐ろしく待ち時間が長いので有名だった。
そこで、土曜日に彼が勤務している個人病院に来いという。
そこならすいているというわけだ。
次の土曜日に、僕は車で30分以上かけて、彼が土曜日に勤務している病院に向かった。
彼は、切るのがうまいということで有名だったので、身体にメスを入れることは、人生初であったが、安心していた。
でも“男性でも乳がん”という言葉が、気になっていた。
土曜日の8時半頃に病院着くと、病院はさすがにがらんとしている。
(つづく)
