くちびるが激突
- 2015/10/28
- 00:00
僕のいた会社でもPCのショウルームは、人通りの多い場所の1階にあり、誰でもが入っていけるような場所だった。
それ以外にも、オフィスのなかには、特定のお客様に、デモしながらプレゼンができる部屋も用意されていた。
いまではこういう場所も少なくなっているが、そのようなスペースは、できるだけ見栄え良い作りになっている。
すべて周囲がガラス張りで、そのなかにはPCが並び、周辺機器といわれるものも設置されている。お客様が座る椅子もゆったりとして、座り心地のよいものになっている。
普段は、そこでデモをする技術者たちが、作業をしている。
デモの準備であったり、確認作業をするための場所になる。
いつもそこで仕事をしているひとり、W君は、この手の仕事が得意だ。
てきぱきを仕事をこなし、お客様の評判もいい。
その日も、朝一番からその部屋で仕事をするために、自分の机のある上の階からエレベータで、その階へ移動した。
デモは今日の午後からだ。
準備の最後の仕上げで、昨夜もほとんど徹夜に近い作業をしていた。
エレベーターを降りて、時計を気にしながら、眠たい目をこすりながら、その場所に小走りに進んで行った。
事前確認をするということで同じグループのメンバー数名が、すでに集まっていた。
時計を見ると、エレベータを降りたときには、すでに開始予定時刻を過ぎていた。
あまり遅れてはまずいと、勢いよくW君は走り込んだ。
運が悪かったのは、その部屋の扉はガラス張りで、しかも強化ガラスだったのだ。
目がかすんでいたのか、扉が開いていると思い、W君は、速度を緩めることなく、ガラスにそのまま突進した。
だが、扉はきっちりしまっている。
W君の顔面がガラス扉に正面衝突した。
当然だ。
目から火花が飛ぶ、とはこのことである。
ガラス扉が頑丈すぎて、割れることがなかったのは幸いだったが、W君は扉にはじきとばされるように後ろ向きに倒れてしまった。
しばらく脳しんとうのような状態だ。
部屋のなかに集まっていたグループのメンバーが、驚いて駆けつけてくる。
大きな衝撃音もあり、メンバーの顔は、W君が大丈夫かと心配している。
だが、W君はふらふらしながらも、立ち上がった。
こうなると、W君のガラスに突進したことを気遣うよりも、なにやってんねん、とからかい始める者が出てくる。
ただ、メンバーのなかの女性は、W君のことを心配して、医務室に連れて行こうとする。
W君は、大丈夫だといいながら、女性社員と一緒にエレベータの方に向かって行く。
残ったメンバーは、よくガラスが割れなかったことだと、感心しながら、衝突した箇所を見ている。
すると、ちょうどW君の顔がぶつかったあたりに、うっすらと皮膚片のようなものが付いているではないか。
その場所は、ちょうどW君の唇がガラスに衝突したあたりだ。
勢いよくぶつかったときに、唇の皮膚がガラスに圧着されたように、残っていたのだ。
あらためて、それを見たメンバーが、驚いたことは言うまでもない。
しみじみと皮膚片を見つめている。
ガラスにキスである。
それからは、そのガラス扉には、”ガラスあります”という紙が貼られるようになったのだ。
あまりに透明すぎるガラスには用心しないといけないね。

それ以外にも、オフィスのなかには、特定のお客様に、デモしながらプレゼンができる部屋も用意されていた。
いまではこういう場所も少なくなっているが、そのようなスペースは、できるだけ見栄え良い作りになっている。
すべて周囲がガラス張りで、そのなかにはPCが並び、周辺機器といわれるものも設置されている。お客様が座る椅子もゆったりとして、座り心地のよいものになっている。
普段は、そこでデモをする技術者たちが、作業をしている。
デモの準備であったり、確認作業をするための場所になる。
いつもそこで仕事をしているひとり、W君は、この手の仕事が得意だ。
てきぱきを仕事をこなし、お客様の評判もいい。
その日も、朝一番からその部屋で仕事をするために、自分の机のある上の階からエレベータで、その階へ移動した。
デモは今日の午後からだ。
準備の最後の仕上げで、昨夜もほとんど徹夜に近い作業をしていた。
エレベーターを降りて、時計を気にしながら、眠たい目をこすりながら、その場所に小走りに進んで行った。
事前確認をするということで同じグループのメンバー数名が、すでに集まっていた。
時計を見ると、エレベータを降りたときには、すでに開始予定時刻を過ぎていた。
あまり遅れてはまずいと、勢いよくW君は走り込んだ。
運が悪かったのは、その部屋の扉はガラス張りで、しかも強化ガラスだったのだ。
目がかすんでいたのか、扉が開いていると思い、W君は、速度を緩めることなく、ガラスにそのまま突進した。
だが、扉はきっちりしまっている。
W君の顔面がガラス扉に正面衝突した。
当然だ。
目から火花が飛ぶ、とはこのことである。
ガラス扉が頑丈すぎて、割れることがなかったのは幸いだったが、W君は扉にはじきとばされるように後ろ向きに倒れてしまった。
しばらく脳しんとうのような状態だ。
部屋のなかに集まっていたグループのメンバーが、驚いて駆けつけてくる。
大きな衝撃音もあり、メンバーの顔は、W君が大丈夫かと心配している。
だが、W君はふらふらしながらも、立ち上がった。
こうなると、W君のガラスに突進したことを気遣うよりも、なにやってんねん、とからかい始める者が出てくる。
ただ、メンバーのなかの女性は、W君のことを心配して、医務室に連れて行こうとする。
W君は、大丈夫だといいながら、女性社員と一緒にエレベータの方に向かって行く。
残ったメンバーは、よくガラスが割れなかったことだと、感心しながら、衝突した箇所を見ている。
すると、ちょうどW君の顔がぶつかったあたりに、うっすらと皮膚片のようなものが付いているではないか。
その場所は、ちょうどW君の唇がガラスに衝突したあたりだ。
勢いよくぶつかったときに、唇の皮膚がガラスに圧着されたように、残っていたのだ。
あらためて、それを見たメンバーが、驚いたことは言うまでもない。
しみじみと皮膚片を見つめている。
ガラスにキスである。
それからは、そのガラス扉には、”ガラスあります”という紙が貼られるようになったのだ。
あまりに透明すぎるガラスには用心しないといけないね。
