きちんとした人
- 2015/11/14
- 00:00
IT会社で仕事をしていたときは、お客様訪問が重要な仕事になる。
お客様訪問の積み重ねがビジネスにつながると言ってもいい。
いろいろなお客様訪問をやってきた。
一人で訪問する単独CALLも多かったが、担当営業と一緒に行ったり、ある分野のスペシャリストと訪問したり、あるときは、役員クラスの人との訪問もあった。
IT系の会社は、外資系だったので、本社のあるアメリカから来た人とCALLしたこともある。
名刺にVICE PRESIDENTと書いてあるアメリカの役員とお客様を訪問したこともった。
VICE PRESIDENTとは副社長ということだが、日本の会社では副社長というのは、1社に何人もいない。多くてもせいぜい二人とか三人だろう。
ところがアメリカの会社には、やたらとVICE PRESIDENTという肩書きを持った人がいる。
おそらく10人以上はいたと思う。
日本のお客様には、アメリカ本社のVICE PRESIDENTを連れてきますと言うと、喜ばれることが多い。それだけお客様を大切にしていることになるからだ。
あるとき、京都の大学の副学長を訪問したことがあった。
副学長も英語で言うならVICE PRESIDENTだ。
ふたりのVICE PRESIDENTの英語での話し合いは、大いに盛り上がった。
僕が驚いたのは、お客様を訪問するときに、電車のなかで、そのVICE PRESIDENTがPCを広げて,自らパワーポイントの資料を修正していたことだ。
なにもかも自分でやることになっているのだろう。
当時はパワーポイントをようやく使い始めた頃だったので、余計に感心したものだ。
彼に初めて会ったのは、大阪のホテルのロビーだった。
どんな人が登場してくるか、予め想像していたのだが、僕の予想は全くはずれていた。
割腹のいい、少し頭がはげ上がった、大男を想像していたのだが、僕の目の前に現れたのは、すらりとした筋肉質タイプの若い男性だった。
背は想像とおり高かったが、体重までもきちんとコントロールできているのがよく分かった。
アメリカからのゲストと一緒にお客様を訪問して、別の意味で感心したことがある。
ある技術分野の専門家をお客様にお連れしたときだ。
技術的にはかなりレベルが高く、その分野では、世界でもトップクラスの研究者といっても過言ではない人だった。
日本では、このようなレベルの人は、技術的には高いものを持っていても、お客様に説明する場面は、あまり得意でない人も多い。
ところが、この専門家は、お客様でのプレゼンもなかなかのものだった。
きっと、アメリカでは、持っている技術が高くても、その内容を相手に説明できないのであれば、認めてもらえないのだろう。
幼いころからプレゼン能力、自分の持っている技術を相手に伝える能力を磨く場面が多くあるのに違いない。
いろいろな人とのお客様訪問の場面の中でも、一番印象に残っているのは、Nさんとの訪問だった。
Nさんは、そのときはお客様の担当営業だった。
僕は、ある分野の担当者ということでお客様に提案、説明をする役割だった。
Nさんはその後、部門の人事担当になるのだが、このような役職につく人は、クリーンな人、きちんとしている人というのが条件だった。
お客様は大学の先生である。
キャンパスに入り、先生のおられる建屋に向かって行く。
建屋に入り、エレベータで先生の部屋の階で降りる。
先生の部屋は、この通路の先にある。
そのとき、Nさんは言ったのだ。
「トイレは大丈夫ですか」
まるで小学生に対する問いかけだが、Nさんは真面目に聞いてくる。
万全の体制でお客様にお会いしたいのだ。
「はい、大丈夫です」
僕は、小学生のようにNさんへ答えた。
長い間、お客様の訪問をやってきたが、部屋に入る前に、自分からトイレに行くことはあるが、このような質問を受けたのは、後にも先にも、このときだけだ。

お客様訪問の積み重ねがビジネスにつながると言ってもいい。
いろいろなお客様訪問をやってきた。
一人で訪問する単独CALLも多かったが、担当営業と一緒に行ったり、ある分野のスペシャリストと訪問したり、あるときは、役員クラスの人との訪問もあった。
IT系の会社は、外資系だったので、本社のあるアメリカから来た人とCALLしたこともある。
名刺にVICE PRESIDENTと書いてあるアメリカの役員とお客様を訪問したこともった。
VICE PRESIDENTとは副社長ということだが、日本の会社では副社長というのは、1社に何人もいない。多くてもせいぜい二人とか三人だろう。
ところがアメリカの会社には、やたらとVICE PRESIDENTという肩書きを持った人がいる。
おそらく10人以上はいたと思う。
日本のお客様には、アメリカ本社のVICE PRESIDENTを連れてきますと言うと、喜ばれることが多い。それだけお客様を大切にしていることになるからだ。
あるとき、京都の大学の副学長を訪問したことがあった。
副学長も英語で言うならVICE PRESIDENTだ。
ふたりのVICE PRESIDENTの英語での話し合いは、大いに盛り上がった。
僕が驚いたのは、お客様を訪問するときに、電車のなかで、そのVICE PRESIDENTがPCを広げて,自らパワーポイントの資料を修正していたことだ。
なにもかも自分でやることになっているのだろう。
当時はパワーポイントをようやく使い始めた頃だったので、余計に感心したものだ。
彼に初めて会ったのは、大阪のホテルのロビーだった。
どんな人が登場してくるか、予め想像していたのだが、僕の予想は全くはずれていた。
割腹のいい、少し頭がはげ上がった、大男を想像していたのだが、僕の目の前に現れたのは、すらりとした筋肉質タイプの若い男性だった。
背は想像とおり高かったが、体重までもきちんとコントロールできているのがよく分かった。
アメリカからのゲストと一緒にお客様を訪問して、別の意味で感心したことがある。
ある技術分野の専門家をお客様にお連れしたときだ。
技術的にはかなりレベルが高く、その分野では、世界でもトップクラスの研究者といっても過言ではない人だった。
日本では、このようなレベルの人は、技術的には高いものを持っていても、お客様に説明する場面は、あまり得意でない人も多い。
ところが、この専門家は、お客様でのプレゼンもなかなかのものだった。
きっと、アメリカでは、持っている技術が高くても、その内容を相手に説明できないのであれば、認めてもらえないのだろう。
幼いころからプレゼン能力、自分の持っている技術を相手に伝える能力を磨く場面が多くあるのに違いない。
いろいろな人とのお客様訪問の場面の中でも、一番印象に残っているのは、Nさんとの訪問だった。
Nさんは、そのときはお客様の担当営業だった。
僕は、ある分野の担当者ということでお客様に提案、説明をする役割だった。
Nさんはその後、部門の人事担当になるのだが、このような役職につく人は、クリーンな人、きちんとしている人というのが条件だった。
お客様は大学の先生である。
キャンパスに入り、先生のおられる建屋に向かって行く。
建屋に入り、エレベータで先生の部屋の階で降りる。
先生の部屋は、この通路の先にある。
そのとき、Nさんは言ったのだ。
「トイレは大丈夫ですか」
まるで小学生に対する問いかけだが、Nさんは真面目に聞いてくる。
万全の体制でお客様にお会いしたいのだ。
「はい、大丈夫です」
僕は、小学生のようにNさんへ答えた。
長い間、お客様の訪問をやってきたが、部屋に入る前に、自分からトイレに行くことはあるが、このような質問を受けたのは、後にも先にも、このときだけだ。
