甲子園での映画撮影
- 2015/01/29
- 15:01
2002年に公開された映画に「ミスター・ルーキー」がある。
これは、当時最下位が定位置のような弱体タイガースへのファンの熱い思いが作らせた映画とも言える。
ミスター・ルーキーという覆面をかぶった強力な抑えの切り札が登場する。
彼の名前は公開されていない。しかも登板するのは甲子園に限られている。
それは彼が昼間は大阪の会社のサラリーマンだからだ。
夜になると甲子園に登場し、タイガースの勝利に貢献していく。
荒唐無稽な現実にはありえないストーリーである。
シーズン最終戦にジャイアンツとも言える、東京ガリバーズに勝って、優勝するのである。
主人公のミスタールーキーが、長嶋一茂というところが、気に入らないが、タイガースが優勝するのであれば、それもタイガースファンとしては、許そう。
当時は野村監督になっても最下位を4年続けていた年であり、バースが代打登場するシーンには、多くのタイガースファンが涙したものである。
撮影は甲子園で行われたのであるが、一つの試合を何日にも分けて撮影する。
当時、私設応援団の端くれであった僕も、1回だけ撮影のためにライトスタンドに行った。
シーンとしては、最終戦の最終回という設定である。
当日は生憎の天気で、ライトスタンドに集まった数百人のタイガースファンは、体を震わせて、撮影の時間を待っていた。
撮影は時間とおりには、始まらない。
しばらくすると、選手が外野にでてきて、キャッチボールを始める。
と言っても、もちろんタイガースの1軍の選手ではない。
顔がはっきり見える程近くにはこないが、知っている選手とは雰囲気が違う。
2軍の選手かと思ってよく見ると、どうも体の線が細い。
どうやらエキストラである。どこかのノンプロの野球選手のようだ。
雨が振りそうな天候のなか、スタンドでじっと待っている。
撮影には何度も来ているファンのひとりが大きな声で、
「撮影はこんなものなんや。予定はあってないようなもんや。
わしは、これで4回目やけど、毎回こんな調子や」と隣の見知らぬファンに話しかける。
自分がいかに熱心に、この撮影にエキストラとして来ているかを、饒舌に話し続ける。
「おたくさんは、はじめてでっか」と反対側の人に聞いている。
それは、まずいでしょう。
その人は、私設応援団のユニフォームをちゃんと着ている。
僕もよく知っている人だ。
そんな質問をしてはいけない人だ。
ぽつりとドスの利いた声で返事をする。
「何回?今日で8回目や」
そう、彼は毎回来ていたのだ。
質問をした彼は、体を縮めて、小さくなった。
こんな寒い日に、いくらタイガースファンでも、選手が出てくることもないのに、球場に来て、撮影に協力するのはなぜだろう。エキストラ料をもらえるわけでもない。
ライトスタンドに応援団の役割で来ているファンのひとたちは、もしかしたら映画の1シーンに、ちらっとでも映るのではないかと期待していたのかもしれない。
確かに、そのとおりで、僕はできあがった映画の試写会に行き、スタンドが映るたびに、真剣に画面を見たものだ。
だが、期待に反して、映っていたのは、最前列に陣取っていた応援団の会長と、テレビにも出ている、有名人だけだった。考えてみれば当たり前の話しだ。
でも映らなくてもいい。タイガースが映画の中でも優勝するのであれば、現場に行って応援したいのである。
それがタイガースファンというものだ。
楽しい時間だった。
スコアボードもそれらしく作られているが、選手名は実在の選手ではありません。

外野のファンの人たち。

内野席は、もちろん空席。

これは、当時最下位が定位置のような弱体タイガースへのファンの熱い思いが作らせた映画とも言える。
ミスター・ルーキーという覆面をかぶった強力な抑えの切り札が登場する。
彼の名前は公開されていない。しかも登板するのは甲子園に限られている。
それは彼が昼間は大阪の会社のサラリーマンだからだ。
夜になると甲子園に登場し、タイガースの勝利に貢献していく。
荒唐無稽な現実にはありえないストーリーである。
シーズン最終戦にジャイアンツとも言える、東京ガリバーズに勝って、優勝するのである。
主人公のミスタールーキーが、長嶋一茂というところが、気に入らないが、タイガースが優勝するのであれば、それもタイガースファンとしては、許そう。
当時は野村監督になっても最下位を4年続けていた年であり、バースが代打登場するシーンには、多くのタイガースファンが涙したものである。
撮影は甲子園で行われたのであるが、一つの試合を何日にも分けて撮影する。
当時、私設応援団の端くれであった僕も、1回だけ撮影のためにライトスタンドに行った。
シーンとしては、最終戦の最終回という設定である。
当日は生憎の天気で、ライトスタンドに集まった数百人のタイガースファンは、体を震わせて、撮影の時間を待っていた。
撮影は時間とおりには、始まらない。
しばらくすると、選手が外野にでてきて、キャッチボールを始める。
と言っても、もちろんタイガースの1軍の選手ではない。
顔がはっきり見える程近くにはこないが、知っている選手とは雰囲気が違う。
2軍の選手かと思ってよく見ると、どうも体の線が細い。
どうやらエキストラである。どこかのノンプロの野球選手のようだ。
雨が振りそうな天候のなか、スタンドでじっと待っている。
撮影には何度も来ているファンのひとりが大きな声で、
「撮影はこんなものなんや。予定はあってないようなもんや。
わしは、これで4回目やけど、毎回こんな調子や」と隣の見知らぬファンに話しかける。
自分がいかに熱心に、この撮影にエキストラとして来ているかを、饒舌に話し続ける。
「おたくさんは、はじめてでっか」と反対側の人に聞いている。
それは、まずいでしょう。
その人は、私設応援団のユニフォームをちゃんと着ている。
僕もよく知っている人だ。
そんな質問をしてはいけない人だ。
ぽつりとドスの利いた声で返事をする。
「何回?今日で8回目や」
そう、彼は毎回来ていたのだ。
質問をした彼は、体を縮めて、小さくなった。
こんな寒い日に、いくらタイガースファンでも、選手が出てくることもないのに、球場に来て、撮影に協力するのはなぜだろう。エキストラ料をもらえるわけでもない。
ライトスタンドに応援団の役割で来ているファンのひとたちは、もしかしたら映画の1シーンに、ちらっとでも映るのではないかと期待していたのかもしれない。
確かに、そのとおりで、僕はできあがった映画の試写会に行き、スタンドが映るたびに、真剣に画面を見たものだ。
だが、期待に反して、映っていたのは、最前列に陣取っていた応援団の会長と、テレビにも出ている、有名人だけだった。考えてみれば当たり前の話しだ。
でも映らなくてもいい。タイガースが映画の中でも優勝するのであれば、現場に行って応援したいのである。
それがタイガースファンというものだ。
楽しい時間だった。
スコアボードもそれらしく作られているが、選手名は実在の選手ではありません。

外野のファンの人たち。

内野席は、もちろん空席。
