お客様は神様です(1)
- 2015/12/10
- 00:00
お客様のことを一番に考えるのはビジネスの基本である。
ただ、仕事によっては、それを実感出来る仕事もあれば、そういう感覚を持てない仕事もある。
僕自身の場合、製造業で仕事をしているときは、一般消費者が購入するような製品をつくっていたわけではないので、お客様の声が直接入ってくることはなかった。
次に仕事をしたIT系の会社では、常にお客様が目の前に居る。
お客様のご要望をいくらでも聞く機会がある。
そこで初めて、お客様を第一に考えるという習慣が付いてきた。
IT系の会社で、僕の上司だったIさんの話だ。
Iさんは営業一筋でやってきた人だ。
Iさんが若い営業の頃である。
年に1回大きな会合があった。
それはお客様を中心にお客様の講演とお客様同士の交流の場を提供する趣旨で開催されていた。
裏方としてその会合を運営するのは、IT会社の役割となる。
その年、その会合は札幌で開催された。
2日間での日程である。
1泊は必須となる。
Iさんは自分のお客様をエスコートする形で、出張で札幌に飛んだ。
自分のお客様でわざわざ北海道での会合に参加されたのは、お一人だった。
情報システム部門の部門長である。
システム導入の決定権を持っているキーマンなので、会社も同行して出張することを認めてくれたのである。
初日の会合は、講演が終わり、夜の懇親会に入る。
立食ではあるが、食事とお酒が入ってくる。
Iさんのお客様は、お酒が入ると、人が変わるタイプである。
懇親会場を抜け出して、夜の街にくりだそうとIさんを誘う。
Iさんは、これは関係を深めるチャンスとばかりに、今夜はとことん行きましょうと、自信のある体力に任せて、むしろお客様を引っ張って行く。
札幌の夜は長い。
かなり二人とも飲んでいる。
はしごをして、最後の店を二人は出る。
店を出るときに、用を済ませておけばよかったのであるが、ホテルへ帰る途中で、歩きながら、二人とも尿意を催した。
ホテルはすぐそこのはずだ。
目の前に交番がある。
お客様はほとんど記憶が飛んでいたそうだ。
Iさんは、お客様をエスコートするという立場を忘れずに、まだ意識はしっかりと持っていた。
突然、お客様がIさんへ言う。
「おい、I」呼び捨てだ。
「おまえは営業だろ。営業だったら、客の言うことはなんでも聞けるな」
すっかり若い部下に対する命令口調だ。
Iさんも「はい、そのとおりです」と調子を合わせる。
お客様はさらに続ける。
「あそこに交番がある。見えるな」
「はい、見えます」
「よし、、、ここで小便をしろ」
とんでもない事を言い放った。
Iさんは、どうしたか。
お客様の言うことには先ず、YESで答えるというのが信条のIさんだ。
だが、深夜とはいえ、まだ人が歩いている夜の街だ
しかも、目の前に交番である。
(つづく)

ただ、仕事によっては、それを実感出来る仕事もあれば、そういう感覚を持てない仕事もある。
僕自身の場合、製造業で仕事をしているときは、一般消費者が購入するような製品をつくっていたわけではないので、お客様の声が直接入ってくることはなかった。
次に仕事をしたIT系の会社では、常にお客様が目の前に居る。
お客様のご要望をいくらでも聞く機会がある。
そこで初めて、お客様を第一に考えるという習慣が付いてきた。
IT系の会社で、僕の上司だったIさんの話だ。
Iさんは営業一筋でやってきた人だ。
Iさんが若い営業の頃である。
年に1回大きな会合があった。
それはお客様を中心にお客様の講演とお客様同士の交流の場を提供する趣旨で開催されていた。
裏方としてその会合を運営するのは、IT会社の役割となる。
その年、その会合は札幌で開催された。
2日間での日程である。
1泊は必須となる。
Iさんは自分のお客様をエスコートする形で、出張で札幌に飛んだ。
自分のお客様でわざわざ北海道での会合に参加されたのは、お一人だった。
情報システム部門の部門長である。
システム導入の決定権を持っているキーマンなので、会社も同行して出張することを認めてくれたのである。
初日の会合は、講演が終わり、夜の懇親会に入る。
立食ではあるが、食事とお酒が入ってくる。
Iさんのお客様は、お酒が入ると、人が変わるタイプである。
懇親会場を抜け出して、夜の街にくりだそうとIさんを誘う。
Iさんは、これは関係を深めるチャンスとばかりに、今夜はとことん行きましょうと、自信のある体力に任せて、むしろお客様を引っ張って行く。
札幌の夜は長い。
かなり二人とも飲んでいる。
はしごをして、最後の店を二人は出る。
店を出るときに、用を済ませておけばよかったのであるが、ホテルへ帰る途中で、歩きながら、二人とも尿意を催した。
ホテルはすぐそこのはずだ。
目の前に交番がある。
お客様はほとんど記憶が飛んでいたそうだ。
Iさんは、お客様をエスコートするという立場を忘れずに、まだ意識はしっかりと持っていた。
突然、お客様がIさんへ言う。
「おい、I」呼び捨てだ。
「おまえは営業だろ。営業だったら、客の言うことはなんでも聞けるな」
すっかり若い部下に対する命令口調だ。
Iさんも「はい、そのとおりです」と調子を合わせる。
お客様はさらに続ける。
「あそこに交番がある。見えるな」
「はい、見えます」
「よし、、、ここで小便をしろ」
とんでもない事を言い放った。
Iさんは、どうしたか。
お客様の言うことには先ず、YESで答えるというのが信条のIさんだ。
だが、深夜とはいえ、まだ人が歩いている夜の街だ
しかも、目の前に交番である。
(つづく)
