社長から電話が入る
- 2015/12/14
- 00:00
これもIさんの話だ。
Iさんが地方の営業所長をやっていたときである。
外資系の会社の場合、どうしても国産メーカーに比べると不利になる場合がある。
そのときも、国立の大学への商談があり、なかなか国産の壁が高い。
国立大学の場合、仕様書がでて、官報にも公示がされ、公平な競争がされているのであるが、それは表向き、手続き上の話である。
実際は、購入物品を決める担当の先生や、事務方がしっかりと手を握って、現行の物品を導入している国産メーカーの製品が入るように、誘導していく。
いまでも、そのようなことはやっていないところもあるが、当時は、国産の壁は非常に堅牢で崩すのは至難の技だった。
Iさんにとっては、技術的な品質では、国産メーカーを凌いでいる部分もあり、政治的なところから、競争に参画できないことを歯がゆく思っていた。
なんとかしたいと考えた。
こちらには失うものがないのだ。
少々の無茶をやっても、恐れることはない。
そう腹をくくると、逆に強くもなれる。
窮鼠猫を噛むという状況にも持って行ける。
Iさんは、ある方法を考えた。
大学の事務方となんとか会えることができた。
そこで、当時外国製品に日本政府が高い関税をかけて、排除しようとしていることを欧米から指摘され、国際的な問題になったいたことに結びつけて話をしたのだ。
よく考えれば、その問題とは直結する話ではないのだが、それは話し方ひとつだ。
「ここで弊社の製品が受け入れられないような、仕様書ができあがると、政治問題にもなりますね。日米間の問題ですので、一地方大学の入札の問題では済まなくなります」
見方によっては、脅しているようにも聞こえてくる。
事務方の担当者は、何を言い出すのだと、顔色が悪くなってきた。
そこでIさんは、たたみかける。
「新聞も取り上げるでしょう。ちょうどタイミングが悪いですわ。
世間でも国際問題として、報道されているのはご存じだと思いますが。
この際、思い切って門戸開放なさってはどうでしょうか。
結局、そのほうが大学のためにもなりますよ」
担当者は、上と相談しますからと、早々に打合せを終わらせた。
I さんは、くれぐれも宜しくお願いしますと、席を立った。
オフィスに戻ってから、Iさんは、大学の事務方からの連絡を待つことにした。
1日、2日と時間が経過していく。
一向に大学からは連絡がない。
1週間経った日の午前中だ。
Iさんの机の電話がなった。
相手は、電話にでるとすぐに、名前を言った。
社長の名前ではないか。
当時の社長は、動きの早い人だった。
Iさんは、前年の成績優秀者の表彰の席で、社長から賞状と記念品を直接授与されていた。
そのときを含め、前年のビッグビジネスの件で社長には数回会っている。
当然、社長もIさんの顔も覚えていたのだろう。
「Iさん、今、○○大学の案件をやっているんだろ。あれは、あまり無茶はしないように」
Iさんは、頭を高速で回転させた。
大学の事務方のトップから大学のトップへ話が行く。
大学のトップからどこかを経由して、Iさんの会社の社長まで、大学からの要望が伝わったのだ。
Iさんは、これ以上強引に進めても、しようがないと咄嗟に決断した。
「はい、分かりました」と即答し、大上段に構えている刀を鞘に収めることにしたのだ。
もちろん、その後、Iさんは、リカバリーのビジネスをしっかりと獲得したのは言うまでもない。
詳しい話は闇のなかであるが、ビジネスはあれやこれやで、結局は人間と人間の間で進んでいく。

Iさんが地方の営業所長をやっていたときである。
外資系の会社の場合、どうしても国産メーカーに比べると不利になる場合がある。
そのときも、国立の大学への商談があり、なかなか国産の壁が高い。
国立大学の場合、仕様書がでて、官報にも公示がされ、公平な競争がされているのであるが、それは表向き、手続き上の話である。
実際は、購入物品を決める担当の先生や、事務方がしっかりと手を握って、現行の物品を導入している国産メーカーの製品が入るように、誘導していく。
いまでも、そのようなことはやっていないところもあるが、当時は、国産の壁は非常に堅牢で崩すのは至難の技だった。
Iさんにとっては、技術的な品質では、国産メーカーを凌いでいる部分もあり、政治的なところから、競争に参画できないことを歯がゆく思っていた。
なんとかしたいと考えた。
こちらには失うものがないのだ。
少々の無茶をやっても、恐れることはない。
そう腹をくくると、逆に強くもなれる。
窮鼠猫を噛むという状況にも持って行ける。
Iさんは、ある方法を考えた。
大学の事務方となんとか会えることができた。
そこで、当時外国製品に日本政府が高い関税をかけて、排除しようとしていることを欧米から指摘され、国際的な問題になったいたことに結びつけて話をしたのだ。
よく考えれば、その問題とは直結する話ではないのだが、それは話し方ひとつだ。
「ここで弊社の製品が受け入れられないような、仕様書ができあがると、政治問題にもなりますね。日米間の問題ですので、一地方大学の入札の問題では済まなくなります」
見方によっては、脅しているようにも聞こえてくる。
事務方の担当者は、何を言い出すのだと、顔色が悪くなってきた。
そこでIさんは、たたみかける。
「新聞も取り上げるでしょう。ちょうどタイミングが悪いですわ。
世間でも国際問題として、報道されているのはご存じだと思いますが。
この際、思い切って門戸開放なさってはどうでしょうか。
結局、そのほうが大学のためにもなりますよ」
担当者は、上と相談しますからと、早々に打合せを終わらせた。
I さんは、くれぐれも宜しくお願いしますと、席を立った。
オフィスに戻ってから、Iさんは、大学の事務方からの連絡を待つことにした。
1日、2日と時間が経過していく。
一向に大学からは連絡がない。
1週間経った日の午前中だ。
Iさんの机の電話がなった。
相手は、電話にでるとすぐに、名前を言った。
社長の名前ではないか。
当時の社長は、動きの早い人だった。
Iさんは、前年の成績優秀者の表彰の席で、社長から賞状と記念品を直接授与されていた。
そのときを含め、前年のビッグビジネスの件で社長には数回会っている。
当然、社長もIさんの顔も覚えていたのだろう。
「Iさん、今、○○大学の案件をやっているんだろ。あれは、あまり無茶はしないように」
Iさんは、頭を高速で回転させた。
大学の事務方のトップから大学のトップへ話が行く。
大学のトップからどこかを経由して、Iさんの会社の社長まで、大学からの要望が伝わったのだ。
Iさんは、これ以上強引に進めても、しようがないと咄嗟に決断した。
「はい、分かりました」と即答し、大上段に構えている刀を鞘に収めることにしたのだ。
もちろん、その後、Iさんは、リカバリーのビジネスをしっかりと獲得したのは言うまでもない。
詳しい話は闇のなかであるが、ビジネスはあれやこれやで、結局は人間と人間の間で進んでいく。
