大阪の大きな本屋というと、紀伊國屋がある。
阪急電車を使うことが多いので、阪急電車の梅田駅のすぐ近くにある紀伊國屋に、時間があるときには寄ってみる。
本を買って、レジに並ぶ。
カバーをしてもらったり、カードを出して、会計が済むまでの時間に、ふと横を見ると、気になる本が積んである。
どういう判断で、そこに置かれる本が決められているのかは分からないが、絶妙な選択がされているときがある。
本屋さんの店員の仕掛けた罠にはまるような感じで、思わず手に取って、これも一緒にと、もう1冊追加して買うことがある。
そのような調子で買ったのが、桜井進さんが書いた数学の本である。
僕の買ったのは、頭に超という文字が二つついている。
“超・超面白くて眠れなくなる数学”というタイトルだ。
超が二つついているので、シリーズ本の三冊目ということだ。
シリーズ一冊目は、超という字がつかない、“面白くて眠れなくなる数学”というタイトル。
これが売れて、続編が出て、さらに続編が出ているということだろう。
数学には、何となく興味があったので、この本を購入したのだが、あるとき夕刊に数学の話が連載されていることがあった。そのときに面白そうだと思って、購入した本がある。
それは、“はじめてであうすうがくの絵本”という絵本である。
3冊が1つの箱に収められている、かなり厚手の本だ。
著者は安野光雅さん。
本を開くと絵がたくさんある。その横に問題のような文章が書かれている。
絵本と言っても、小学校に入らないと読めないようなレベルだ。
文字の大きさも絵本としては、小さい部類だろう。
もう1冊、これも安野光雅さんの本がある。
“赤いぼうし”というタイトルだ。
この本の副題には、<美しい数学>とある。
文章を書いたのは野崎昭弘さん、絵を描いたのが安野光雅さんだ。
内容は結構レベルが高いクイズ問題のようになっている。
でもものごとを、筋道を立てて考える習慣を付けるにはいい問題が、きれいな絵と一緒に並んでいる。
一番簡単なものを、要約して書くとこうなる。
帽子が2つあります。
赤色と白色が一つずつあります。
太郎君とあなたはその帽子をひとずつかぶせられました。
あなたには自分の帽子の色は見えません。
太郎君の帽子の色は見えます。赤色です。
さて、あなたの帽子の色は何色でしょうか。
これは簡単です。
答えは白色ですね。
段々問題は複雑になってきます。
帽子の数が増えていきます。
帽子があります。
赤色が2つと白色が1つです。
あなたから太郎君の帽子の色は見えます。赤色です。
太郎君に聞きました。
「太郎君の帽子の色はなにですか」
太郎君は、少し考えて答えました。
太郎君には、あなたの帽子の色は、もちろん見えていますが、太郎君の帽子の色は見えません。
「はい、僕の帽子の色は赤です」
太郎君は自分の帽子の色は見えませんが、あなたの帽子の色をみて、そこから自分の帽子の色が分かりました。
さて、あなたの帽子の色は、なにでしょう。
太郎君がどのように考えたかを、考えてみれば、答えは出てきます。
さらに問題が難しくなっていきます。
帽子をかぶる人が増えます。
花子さんが登場して、3人になります。
こうやって、次々に帽子の問題が続きます。
数学は、素直に考えてゆけば、答えが出てきます。
それは美しい芸術のようなものです。
僕が本屋のレジのカウンターで手にとった“超・超面白くて眠れなくなる数学”に、きれいな数学の例があった。
かけ算の式だ。
先ず初めに1x1 = 1と書く。
同じ数字を掛け合わせるのだ。
次に掛け合わせる数字を11とする。11x11=121となる。
その次は、111を掛け合わせる。 111x111 = 12321
さらに続ける。 1111x1111=124321
これを続けていき、初めから書くとこうなる。
1 x 1 = 1
11 x 11 = 121
111 x 111 = 12321
1111 x 1111 = 1234321
11111 x 11111 = 123454321
111111 x 111111 = 12345654321
1111111 x 1111111 = 1234567654321
11111111 x 11111111 = 123456787654321
111111111 x 111111111 =12345678987654321
かけ算の仕組みを考えれば、当たり前のことだけど、これを見て、数学は美しいでしょう、と言われると、僕もそう思うよって、言う。
数学が出来る人は、どこか常人とは違うところがあると思うけど、きっとどこかで数学の魅力に取りつかれているのだろう。
僕はとても、その域には達せないけどね。