ぶろぐのあたま

数学がとことん好きな人、数学にのめり込んでいるような人は、常人とは違う。
学生のころに言われた言葉に、数学科に進むやつは、普通のやつではないというのがある。
たまたま僕のいたクラブ、水泳部の先輩に数学科のKさんがいた。
僕より数年上だったので、修士課程か、博士課程だったのだろう。
いずれにしても大学院である。
Kさんは、水泳部の本業とも言える競泳にはほとんど興味を示していなかった。
大会で泳いでいるのを見た記憶がない。
ところが毎日のように部室に来ては、トレーニングルームにある筋トレのバーベルとかの器具を使っている。
筋トレマニアと言える。

伊豆の田舎に大学の寮があった。
当時は、夏休みには、毎年水泳部から管理人を出さないといけないという決まりがあった。
寮の目の前は、きれいな海があり、海水浴客で賑わうような場所だ。
1週間くらい滞在するのであれば、誰でも喜んで行く仕事だ。
食事はもちろん出る。
バイト代もささやかながら出たはずだ。
夏休みをのんびり過ごす場所としては最適だろう。
管理人の仕事と言っても、食事とか掃除とかはやってもらえる人が現地にいるので、たいしたことはない。
ところが、2ヶ月近い間、ここに居すわるという管理人の仕事には、なかなか手を挙げる部員がいない。

水泳部のマネジャーは、Kさんが入部してからは、毎年この仕事をKさんに頼むのである。
初めてKさんに打診したときは、やってもらえれば儲けものという気持ちで、ダメ元で依頼したのであるが、Kさんは意外にも簡単にOKをだした。
Kさんの条件は、ただひとつである。
部室に置いてある、トレーニングの機材一式を伊豆の寮に運んで使えるようにすることであった。
マネジャーがただちに車を走らせて、機材を伊豆まで運んだのは言うまでもない。

Kさんは、筋トレと数学を思う存分、夏休みの間、伊豆で満喫したのである。
やはり、数学の達人は、常人とは違うのである。