花びらに手を
- 2016/01/04
- 00:00
学生の頃の話だ。
当時、吉祥寺に住んでいた。
よく一緒に遊んでいた早稲田の友人連中と吉祥寺のスナックに行った。
学生が入れる店なので、随分安い店だったと思う。
ママが一人でやっている店だった。
カウンター席とその後ろにソファが置いてあった。
10人も入れば一杯になる店だ。
ときどきは、早稲田の友人がバイトで手伝っていた。
僕はそれほど飲めないので、薄い水割りを飲んでいた。
時にはギターを持ち寄って、何人かでビートルスを歌ったり、日本のフォークソングを歌ったりしていた。
サラリーマンも来ることがあるけど、ママが学生を歓迎していることもあり、結構自由に振る舞えることができる店だった。
4人くらいで集まって、飲んだ後のことだ。
そのスナックを出て、駅のほうにぶらぶらと歩いて行った。
最後にコーヒーを飲もうということになった。
飲み屋から喫茶店へ、今では考えられない流れではあるが、なせか、小洒落たコーヒー屋へ入るべく階段を上がっていった。
それほど大きな店ではない。
オーナーが女性で、豆からひいてくれる店だった。
テーブルに案内されて、4人がひとつのテーブルに座る。
テーブルには花が一輪、細い水差しに入れられている。
店の中は、先ほどのスナックとは違い、照明が部屋の隅々までを照らしている。
スナックでは暗さのために、気がつかなかったが、きっと僕の顔はかなり赤かったはずだ。
他の連中も明らかに酔っていることは,周囲の人からは分かっていただろう。
僕は、コーヒーを待つ間、テーブルの上の花を触りそうになった。
きれいな花びらに吸い寄せられるような感じだ。
優しく触るつもりだったが、コーヒーを運んできた店の女主人に、厳しく言われてしまった。
「花に触らないでください!」
酔いが一気に醒めていくのが分かった。
もちろん花を折るとか,そういう気持はないのであるが、顔を赤くした客が花を触るのが、女主人は許せなかったのだろう。
僕たちは、コーヒーを急いで飲んで店の階段を降りていった。
変なことはいつまでも覚えているものだね。

当時、吉祥寺に住んでいた。
よく一緒に遊んでいた早稲田の友人連中と吉祥寺のスナックに行った。
学生が入れる店なので、随分安い店だったと思う。
ママが一人でやっている店だった。
カウンター席とその後ろにソファが置いてあった。
10人も入れば一杯になる店だ。
ときどきは、早稲田の友人がバイトで手伝っていた。
僕はそれほど飲めないので、薄い水割りを飲んでいた。
時にはギターを持ち寄って、何人かでビートルスを歌ったり、日本のフォークソングを歌ったりしていた。
サラリーマンも来ることがあるけど、ママが学生を歓迎していることもあり、結構自由に振る舞えることができる店だった。
4人くらいで集まって、飲んだ後のことだ。
そのスナックを出て、駅のほうにぶらぶらと歩いて行った。
最後にコーヒーを飲もうということになった。
飲み屋から喫茶店へ、今では考えられない流れではあるが、なせか、小洒落たコーヒー屋へ入るべく階段を上がっていった。
それほど大きな店ではない。
オーナーが女性で、豆からひいてくれる店だった。
テーブルに案内されて、4人がひとつのテーブルに座る。
テーブルには花が一輪、細い水差しに入れられている。
店の中は、先ほどのスナックとは違い、照明が部屋の隅々までを照らしている。
スナックでは暗さのために、気がつかなかったが、きっと僕の顔はかなり赤かったはずだ。
他の連中も明らかに酔っていることは,周囲の人からは分かっていただろう。
僕は、コーヒーを待つ間、テーブルの上の花を触りそうになった。
きれいな花びらに吸い寄せられるような感じだ。
優しく触るつもりだったが、コーヒーを運んできた店の女主人に、厳しく言われてしまった。
「花に触らないでください!」
酔いが一気に醒めていくのが分かった。
もちろん花を折るとか,そういう気持はないのであるが、顔を赤くした客が花を触るのが、女主人は許せなかったのだろう。
僕たちは、コーヒーを急いで飲んで店の階段を降りていった。
変なことはいつまでも覚えているものだね。
