遠くの空に深くお辞儀をする
- 2016/03/04
- 00:00
海外出張に、僕の勘違いでホテルで働いている女性に疑いをかけてしまった。
日本に帰ってから、数年も経ってから、僕の誤解に気がつき、女性たちにお詫びのお辞儀をした。
このことを書いていて、急に思い出した。
それは寅さんの映画である。
そのときのマドンナは、太地喜和子だ。
色っぽい女優だ。
その映画では、赤とんぼで有名な播州竜野の芸者役だった。
男に騙されて、お金をとられてしまう。
寅さんは、有名な日本画の作家、宇野重吉と駅前の焼き鳥屋で知り合う。
寅さんは、有名な画伯とは知るよしもない。
その画伯のことを、家に帰ると、嫁に小言ばかりを言われていて、家には居づらく、こうして毎晩飲み歩いていると、寅さんは勝手に思っている。
しかも無銭飲食の疑いをかけられて、警察に突き出されそうになるところを、寅さんは持ち前の面倒見の良さで飲み代を払って、柴又の家まで連れて帰ってくる。
柴又の家では、この画伯は、態度も横柄である。
おいちゃんもおばさんも、さくらも、まさかそれほどの著名な芸術家ががこんなところにいるとは思わない。
画伯は、迷惑をかけたと言って、さらさらと絵を描く。
そして、寅さんにこれを神田の古本屋に持って行けという。
寅さんは、言われたとおりに持って行くと、店主はそれをじっくりと見て、驚く。
日本画壇でも有名な静観画伯が描いたものだと店主は気がつく。
このようなものは、静観はいままで描いたことはないのだという。
7万円で譲ってくれと、店主は寅さんに頼み込む。
寅さんは、腰をぬかしてしまう。
ものの数分でさらさらと筆を動かすだけで、こんな大金が入るのだ。
その後、寅さんは、竜野でその老画伯に再会する。
そして、夜は、芸者を呼んで大いに盛り上がる。
そのときに、太地喜和子に出会い、意気投合する。
太地喜和子は、金を取り戻すために上京してくる。
だが金は戻ってこない。
柴又の"とらや"にやってくる芸者。
寅さんは、お金はもっていない。
でも助けてやりたい。
そこで老画伯にお願いに行く。
またさらさらと絵を描けと老画伯に言うのだ。
老画伯は、私はお金のためには描かないと断る。
寅さんは、悪口雑言を浴びせて、老画伯の家を飛び出る。
映画の最後のシーンだ。
寅さんは再び竜野を訪れる。
太地喜和子に再会する。
彼女も寅さんを見て、大喜びをする。
家に招きいれる。
そして、見せるのだ。
老画伯が送って来た大作の絵がある。
見事な牡丹の絵。
芸者のときは、太地喜和子は、ぼたんという源氏名だ。
寅さんの頼みを老画伯を一旦は断ったが、描いてくれたのだ。
その絵は芸者が取られたお金以上の価値があるという。
寅さんが、これで取られたお金を取り戻せるな、と言うと、大地喜和子がいう。
「私はこの絵は売らないわ。私の一生の宝物」
寅さんは、家の前の路地にある樽に乗るのだ。
「おい、東京はどっちだ」
そういって、東京の方角に向かって、両手を合わせてから、深々とお辞儀をするのだった。
「先生、ありがとう」
僕の断片的な記憶のなか。寅さんと太地喜和子、そして渋い演技の宇野重吉。
寅さんのラストシーンの深いお辞儀。
僕のお辞儀とは随分意味が違うね。
僕は日本からアメリカに、東の方向だ。
寅さんは、竜野から東京へ、これも東の方向だ。
方向だけは同じか。

日本に帰ってから、数年も経ってから、僕の誤解に気がつき、女性たちにお詫びのお辞儀をした。
このことを書いていて、急に思い出した。
それは寅さんの映画である。
そのときのマドンナは、太地喜和子だ。
色っぽい女優だ。
その映画では、赤とんぼで有名な播州竜野の芸者役だった。
男に騙されて、お金をとられてしまう。
寅さんは、有名な日本画の作家、宇野重吉と駅前の焼き鳥屋で知り合う。
寅さんは、有名な画伯とは知るよしもない。
その画伯のことを、家に帰ると、嫁に小言ばかりを言われていて、家には居づらく、こうして毎晩飲み歩いていると、寅さんは勝手に思っている。
しかも無銭飲食の疑いをかけられて、警察に突き出されそうになるところを、寅さんは持ち前の面倒見の良さで飲み代を払って、柴又の家まで連れて帰ってくる。
柴又の家では、この画伯は、態度も横柄である。
おいちゃんもおばさんも、さくらも、まさかそれほどの著名な芸術家ががこんなところにいるとは思わない。
画伯は、迷惑をかけたと言って、さらさらと絵を描く。
そして、寅さんにこれを神田の古本屋に持って行けという。
寅さんは、言われたとおりに持って行くと、店主はそれをじっくりと見て、驚く。
日本画壇でも有名な静観画伯が描いたものだと店主は気がつく。
このようなものは、静観はいままで描いたことはないのだという。
7万円で譲ってくれと、店主は寅さんに頼み込む。
寅さんは、腰をぬかしてしまう。
ものの数分でさらさらと筆を動かすだけで、こんな大金が入るのだ。
その後、寅さんは、竜野でその老画伯に再会する。
そして、夜は、芸者を呼んで大いに盛り上がる。
そのときに、太地喜和子に出会い、意気投合する。
太地喜和子は、金を取り戻すために上京してくる。
だが金は戻ってこない。
柴又の"とらや"にやってくる芸者。
寅さんは、お金はもっていない。
でも助けてやりたい。
そこで老画伯にお願いに行く。
またさらさらと絵を描けと老画伯に言うのだ。
老画伯は、私はお金のためには描かないと断る。
寅さんは、悪口雑言を浴びせて、老画伯の家を飛び出る。
映画の最後のシーンだ。
寅さんは再び竜野を訪れる。
太地喜和子に再会する。
彼女も寅さんを見て、大喜びをする。
家に招きいれる。
そして、見せるのだ。
老画伯が送って来た大作の絵がある。
見事な牡丹の絵。
芸者のときは、太地喜和子は、ぼたんという源氏名だ。
寅さんの頼みを老画伯を一旦は断ったが、描いてくれたのだ。
その絵は芸者が取られたお金以上の価値があるという。
寅さんが、これで取られたお金を取り戻せるな、と言うと、大地喜和子がいう。
「私はこの絵は売らないわ。私の一生の宝物」
寅さんは、家の前の路地にある樽に乗るのだ。
「おい、東京はどっちだ」
そういって、東京の方角に向かって、両手を合わせてから、深々とお辞儀をするのだった。
「先生、ありがとう」
僕の断片的な記憶のなか。寅さんと太地喜和子、そして渋い演技の宇野重吉。
寅さんのラストシーンの深いお辞儀。
僕のお辞儀とは随分意味が違うね。
僕は日本からアメリカに、東の方向だ。
寅さんは、竜野から東京へ、これも東の方向だ。
方向だけは同じか。
