ラクロスのこと(1)
- 2016/09/20
- 00:00
九州へ出張した1日目の会議が終わった後のことだ。
一緒に会議へ出席した人たちとバスに乗り込んだ。
大学前のバス停から最寄り駅までの20分くらいの路線バスの短い旅である。
乗ったバス停は、始発だったので、どこにでも座れたのだが、同行者がいるので、最後尾の長い座席のところに、一緒に座る。
僕は真ん中あたりに座り、左横は二人分くらいの空きがある。
バスは、大学のキャンパスの中を走っていく。
すぐに隣のバス停に着く。
このバス停からは大学生がどっと乗ってくる。
若い女子学生のグループだ。
大きな荷物を持っている。
見るからにスポーツクラブの学生である。
僕の横に、そのグループの二人が座った。
同じクラブの他のメンバーは立っている人もいれば、他の空いている席に座った人もいる。
大きなバッグに〝ラクロス“と言う文字が読める。
バッグと一緒に持っているのは、おそらくこれがラクロスのラケットなのだろう。
(実はラクロスではラケットとは言わない。クロスと呼ぶそうだ。)
テレビで見たことがある。
バス停を出発して、バスは田舎の道を走っていく。
天気はまだ大丈夫だ。
下り坂という予報で、晴れとは言えないが、雨はまだ降っていない。
僕はしばらく右となりの一緒に会議に出ていた人と話をしていたが、潮が引いたように会話が停まった。
ラクロスのラケット(クロス)に目が行く。
「聞いてもいいですか」とへんなおっさんと勘違いされないように、丁寧に左に座った女子学生に聞いた。
「これはラクロスですか」
見れば分かる、当たり前の質問である。
「はい、そうです」と若いスポーツ少女が元気よく、応えてくれる。
気持ちの良い話しっぷりという感じがする。
「大学のクラブがあるのですか」
「はい、ラクロスのクラブに入っています」
「ラクロスは何人でやるのですか。7人くらいですか」
当たり障りのない質問が続く。
「えっ、そうだっけ」と、不安そうに横の同じクラブの女の子の方を見て、答えるが、自信がなさそうだ。
後でWEBを調べて見ると、女子の場合は、1チーム12人とある。
ローカルルールがあって、人数が変わることがあるのだろうか。
いやいや、そんなことはないだろう。
オフェンスとかデフェンスとか人数の定義がややこしいのかもしれない。
「なぜラクロスをやっているの」
「学生らしいスポーツと思って」
なにが学生らしいのだろうかと考えたが、確かに高校生がやっているのは聞いたことがない。
大学に入らないとできないスポーツだ。
ひとりだけでやることはできないスポーツだ。
大学のクラブで仲間と一緒にやるのが、いかにも合っている。
高校時代の経験者というのもいないだろうから、横一線で同じレベルの仲間が集まりそうだ。
まだまだマイナーなスポーツだと思うが、その分、面白いところもあるのだろう。
その後も、バスが終点の駅前の停留所に着くまで、いままで全く知らなかったラクロスのことを、いろいろ教えてもらった。
九州地区では、ラクロスのチームは6つくらいしかなくて、ほとんどが福岡に集まっていること。
これはリーグ戦をやるにしても便利だ。
ラクロスのルールは、男子と女子は違うこと。
他のスポーツでもそうだが、相手が持っているボールに対しては、アタックしても良いということが多いが、女子のラクロスでは禁止されているそうだ。
やはり、アタックするときにラケット(クロス)で叩かれると大変だ。
知らないことを教えてもらって、随分得した気分である。
きっとすこしは前頭葉が刺激されたはずだ。
バスを降りるときに、女子学生に話しかけたりして、なにを考えているのですかと、一緒に行っている人から茶化されたが、僕としては、ラクロスとは初めての接点なので、聞いてみただけなのだ。
化粧をして着飾った女子大生ではなく、素顔でスポーツの汗につつまれた女の子たちだった。
「汗臭くてすみません」と練習帰りの汗を心配したことも言われたが、そんなことは問題ないのである。
「いや、鼻悪いから、大丈夫」
この会話は、どうも関西風のボケのようで、いやいやどこに行っても、ボケと突っ込みの慣習が抜けきれないのは困ったものである。
「ラクロス、がんばってね」とバスから降りるスポーツ女子たちの背中に声をかけた。
もう会うこともないだろうなぁ。
この写真は本文とは関係ありません。

一緒に会議へ出席した人たちとバスに乗り込んだ。
大学前のバス停から最寄り駅までの20分くらいの路線バスの短い旅である。
乗ったバス停は、始発だったので、どこにでも座れたのだが、同行者がいるので、最後尾の長い座席のところに、一緒に座る。
僕は真ん中あたりに座り、左横は二人分くらいの空きがある。
バスは、大学のキャンパスの中を走っていく。
すぐに隣のバス停に着く。
このバス停からは大学生がどっと乗ってくる。
若い女子学生のグループだ。
大きな荷物を持っている。
見るからにスポーツクラブの学生である。
僕の横に、そのグループの二人が座った。
同じクラブの他のメンバーは立っている人もいれば、他の空いている席に座った人もいる。
大きなバッグに〝ラクロス“と言う文字が読める。
バッグと一緒に持っているのは、おそらくこれがラクロスのラケットなのだろう。
(実はラクロスではラケットとは言わない。クロスと呼ぶそうだ。)
テレビで見たことがある。
バス停を出発して、バスは田舎の道を走っていく。
天気はまだ大丈夫だ。
下り坂という予報で、晴れとは言えないが、雨はまだ降っていない。
僕はしばらく右となりの一緒に会議に出ていた人と話をしていたが、潮が引いたように会話が停まった。
ラクロスのラケット(クロス)に目が行く。
「聞いてもいいですか」とへんなおっさんと勘違いされないように、丁寧に左に座った女子学生に聞いた。
「これはラクロスですか」
見れば分かる、当たり前の質問である。
「はい、そうです」と若いスポーツ少女が元気よく、応えてくれる。
気持ちの良い話しっぷりという感じがする。
「大学のクラブがあるのですか」
「はい、ラクロスのクラブに入っています」
「ラクロスは何人でやるのですか。7人くらいですか」
当たり障りのない質問が続く。
「えっ、そうだっけ」と、不安そうに横の同じクラブの女の子の方を見て、答えるが、自信がなさそうだ。
後でWEBを調べて見ると、女子の場合は、1チーム12人とある。
ローカルルールがあって、人数が変わることがあるのだろうか。
いやいや、そんなことはないだろう。
オフェンスとかデフェンスとか人数の定義がややこしいのかもしれない。
「なぜラクロスをやっているの」
「学生らしいスポーツと思って」
なにが学生らしいのだろうかと考えたが、確かに高校生がやっているのは聞いたことがない。
大学に入らないとできないスポーツだ。
ひとりだけでやることはできないスポーツだ。
大学のクラブで仲間と一緒にやるのが、いかにも合っている。
高校時代の経験者というのもいないだろうから、横一線で同じレベルの仲間が集まりそうだ。
まだまだマイナーなスポーツだと思うが、その分、面白いところもあるのだろう。
その後も、バスが終点の駅前の停留所に着くまで、いままで全く知らなかったラクロスのことを、いろいろ教えてもらった。
九州地区では、ラクロスのチームは6つくらいしかなくて、ほとんどが福岡に集まっていること。
これはリーグ戦をやるにしても便利だ。
ラクロスのルールは、男子と女子は違うこと。
他のスポーツでもそうだが、相手が持っているボールに対しては、アタックしても良いということが多いが、女子のラクロスでは禁止されているそうだ。
やはり、アタックするときにラケット(クロス)で叩かれると大変だ。
知らないことを教えてもらって、随分得した気分である。
きっとすこしは前頭葉が刺激されたはずだ。
バスを降りるときに、女子学生に話しかけたりして、なにを考えているのですかと、一緒に行っている人から茶化されたが、僕としては、ラクロスとは初めての接点なので、聞いてみただけなのだ。
化粧をして着飾った女子大生ではなく、素顔でスポーツの汗につつまれた女の子たちだった。
「汗臭くてすみません」と練習帰りの汗を心配したことも言われたが、そんなことは問題ないのである。
「いや、鼻悪いから、大丈夫」
この会話は、どうも関西風のボケのようで、いやいやどこに行っても、ボケと突っ込みの慣習が抜けきれないのは困ったものである。
「ラクロス、がんばってね」とバスから降りるスポーツ女子たちの背中に声をかけた。
もう会うこともないだろうなぁ。
この写真は本文とは関係ありません。
