はさみの部屋
- 2015/02/19
- 00:00
大木こだま・ひびきのネタのひとつに「はさみの部屋」というものがある。
それほど有名ではないので、一部のマニアにしか,分からないネタだ。
その日はオフィスに随分遅くまで残っていて、そのフロアには、昼間は全員いると100名近い社員がいるのだが、僕が帰るときには、反対側の隅の方に一人だけが残っていた。
僕は、若手3人と一緒だったので、こちら側の照明を消灯して、部屋を出ようとしていた。そのときだ。
反対側で大きな声がした。
「はさみは、はさみの部屋や!」
ひとりで残っていた、おじさんの独り言だ。
周りに人がいないので、まるで家にいるような気分で大きな声が出たのだろう。
紙でも切る必要があって、はさみを探そうとしたのに、すぐには見つからなかったに違いない。
すぐに見つからずに、思わず口に出た独り言。
僕には、すぐにそれがこだま・ひびきのネタだと分かった。
翌日、おじさんにあったときに、「はさみは、はさみの部屋ですよね。こだま・ひびきは好きですか」と聞いたら、何も言わずに恥ずかしそうに視線をはずしてしまった。
おとなしい方なのだ。
そのネタを使う場面は、こんな感じだ。
こだま「ぎょうざについてくるラー油の小さな袋はあけにくいな」
ひびき「そうそう、小さな袋はあけにくいな」
こだま「いや、おまえにはない!」
ひびき「そんなことあるかい、、、、なかなか開けへんから、無理矢理、歯でかみ切ろうとすると、顔にかかったりするやろ」
こだま「そんなときはな、はさみを使わんかい」
ひびき「そういうてもやな、はさみは、はさみの部屋にあるんや」
こだま「はさみの部屋?、、、自分の部屋もないくせに」
だいだいこんな流れである。
はさみが食卓にはなくて、はさみは別の部屋に置いてある、ここにはない。
それをはさみは、はさみの部屋にあると言ったのである。
単に台詞を書いても面白くもおかしくもないのであるが、こだまのもっちゃりしたしゃべりを聞くと、何とも言いがたい味がでてくる。
これと同じような経験を、実は、したことがある。
あれは30年以上前のことだ。
システム関係の仕事をしていたときだ。
当時はまだまだ大型計算機が主流で、そのお客様でも大型計算機がマシンルームという空調のがんがんに効いた部屋に鎮座していた。
そのマシンルームのすぐ隣が、システム担当者の部屋である。
お客様の若い担当者が10名くらい仕事をしていた。
僕もそのマシンルームの隣の部屋で、キーボードに向かっていた。
その日は、午前中で仕事が終わらず、午後も仕事をすることになった。
お客様の担当者は、ほとんど全員が午前中に昼休みの弁当を注文して、その部屋で食べていた。
その日は、余分が出たので、僕にも弁当がまわってきた。係長の方が気を効かせてくれたのである。
僕が若い人と一緒に弁当を食べていたときだ。
弁当には、サラダにかけるドレッシングの小さな入れ物が入っていた。
それは真ん中で二つに折ると、折ったところからドレッシングが出てくるタイプである。
表と裏が分かりにくい。
こう折れば、向こうに飛び出すと思った方向が反対だった。
二つに折ったときに、見事にドレッシングは、僕のワイシャツに向けて飛んできた。
もちろん、逃げる間もない。
これはあかん。
すぐに洗面所に行って、ワイシャツを脱いで洗おうとしたら、係長が気がついて、それはまずいね、これを着たらいい、とお客様の作業着を貸していただけた。
しかも、僕のワイシャツは、ハンガーにかけて、冷房が効いたマシンルームの片隅に干してくれたのである。
強力な冷房でワイシャツは1時間もせずに乾き、午後からは元の姿で仕事を続けることができた。
その後、係長さんには何年間かお世話になったが、お互いが異動して、会うこともなくなってしまった。
こだま・ひびきの「はさみの部屋」のネタを聞いたときに、あのときワイシャツに向かって飛んできたドレッシングを思い出した。
係長さんに会うことも、こだま・ひびきのこのネタを聞くことも、もうないのかもしれない。

それほど有名ではないので、一部のマニアにしか,分からないネタだ。
その日はオフィスに随分遅くまで残っていて、そのフロアには、昼間は全員いると100名近い社員がいるのだが、僕が帰るときには、反対側の隅の方に一人だけが残っていた。
僕は、若手3人と一緒だったので、こちら側の照明を消灯して、部屋を出ようとしていた。そのときだ。
反対側で大きな声がした。
「はさみは、はさみの部屋や!」
ひとりで残っていた、おじさんの独り言だ。
周りに人がいないので、まるで家にいるような気分で大きな声が出たのだろう。
紙でも切る必要があって、はさみを探そうとしたのに、すぐには見つからなかったに違いない。
すぐに見つからずに、思わず口に出た独り言。
僕には、すぐにそれがこだま・ひびきのネタだと分かった。
翌日、おじさんにあったときに、「はさみは、はさみの部屋ですよね。こだま・ひびきは好きですか」と聞いたら、何も言わずに恥ずかしそうに視線をはずしてしまった。
おとなしい方なのだ。
そのネタを使う場面は、こんな感じだ。
こだま「ぎょうざについてくるラー油の小さな袋はあけにくいな」
ひびき「そうそう、小さな袋はあけにくいな」
こだま「いや、おまえにはない!」
ひびき「そんなことあるかい、、、、なかなか開けへんから、無理矢理、歯でかみ切ろうとすると、顔にかかったりするやろ」
こだま「そんなときはな、はさみを使わんかい」
ひびき「そういうてもやな、はさみは、はさみの部屋にあるんや」
こだま「はさみの部屋?、、、自分の部屋もないくせに」
だいだいこんな流れである。
はさみが食卓にはなくて、はさみは別の部屋に置いてある、ここにはない。
それをはさみは、はさみの部屋にあると言ったのである。
単に台詞を書いても面白くもおかしくもないのであるが、こだまのもっちゃりしたしゃべりを聞くと、何とも言いがたい味がでてくる。
これと同じような経験を、実は、したことがある。
あれは30年以上前のことだ。
システム関係の仕事をしていたときだ。
当時はまだまだ大型計算機が主流で、そのお客様でも大型計算機がマシンルームという空調のがんがんに効いた部屋に鎮座していた。
そのマシンルームのすぐ隣が、システム担当者の部屋である。
お客様の若い担当者が10名くらい仕事をしていた。
僕もそのマシンルームの隣の部屋で、キーボードに向かっていた。
その日は、午前中で仕事が終わらず、午後も仕事をすることになった。
お客様の担当者は、ほとんど全員が午前中に昼休みの弁当を注文して、その部屋で食べていた。
その日は、余分が出たので、僕にも弁当がまわってきた。係長の方が気を効かせてくれたのである。
僕が若い人と一緒に弁当を食べていたときだ。
弁当には、サラダにかけるドレッシングの小さな入れ物が入っていた。
それは真ん中で二つに折ると、折ったところからドレッシングが出てくるタイプである。
表と裏が分かりにくい。
こう折れば、向こうに飛び出すと思った方向が反対だった。
二つに折ったときに、見事にドレッシングは、僕のワイシャツに向けて飛んできた。
もちろん、逃げる間もない。
これはあかん。
すぐに洗面所に行って、ワイシャツを脱いで洗おうとしたら、係長が気がついて、それはまずいね、これを着たらいい、とお客様の作業着を貸していただけた。
しかも、僕のワイシャツは、ハンガーにかけて、冷房が効いたマシンルームの片隅に干してくれたのである。
強力な冷房でワイシャツは1時間もせずに乾き、午後からは元の姿で仕事を続けることができた。
その後、係長さんには何年間かお世話になったが、お互いが異動して、会うこともなくなってしまった。
こだま・ひびきの「はさみの部屋」のネタを聞いたときに、あのときワイシャツに向かって飛んできたドレッシングを思い出した。
係長さんに会うことも、こだま・ひびきのこのネタを聞くことも、もうないのかもしれない。
