インターネットはからっぽの洞窟(2)
- 2015/02/22
- 00:00
本書の訳者あとがきには、次のように書かれている。
“ワープロソフトは、とにかく文字数がかせげる。タイプライターに向かった日は、ワープロのときよりも、コンパクトで抑制のきいた文体になる。手書きの日は、人との関わりや自分の生い立ちについて書くことが多い、ということだった(訳者宛の私信より)。“
T先生の言葉は、それをさらにつきつめていた。
手書きでは、文章が簡潔で、びしっとしまっている。印象の強い文章になる。
ワープロでは、文章が長くなり、言いたいことが薄くなり始める。メリハリがなくる。タイプライターは、その中間になる。
というものだった。
確かに手書きで書いた場合は、一度書いたものに対して、初めから全部消して、書き直すという大胆な修正もやりやすい。ところがワープロになると、なかなか、全部を消して、初めから書き直すということは、やりにくい。
これは、文章だけではなく、デザイナーがスケッチを描くときにも言えることだ。
紙と鉛筆でスケッチを描くときは、気に入らないとページ丸ごと破り捨てることもあるだろう。
ところが、現在はCADやCGを使うことで便利になり、機能がどんどん向上して、今までではとても表現できないことも作りだせる。ただ、一旦入力したものを全部削除してしまって、書き直すことが、その分、難しくなっているのではないだろうか。
一度入力を始めると、大胆な修正はやりにくくなり、細部の修正だけになってしまう。
細かいところは素晴らしく、美しくなっていくかもしれないが、大幅に元に返って作り直すのが難しくなっている。
手書きの文章が言いたいことを簡潔に書くことができる、ということを実感したことがある。
それは、年度の締めの日に、当時の部門長から送られて来たメッセージだった。そのメッセージは、その部門長の配下100名以上の人に送られたメールだ。
部門長 Yさんは、いつもメモを手書きで書いていた。
メールでの連絡は、それほど多くはない。必要な時は電話か面談である。
そのメッセージを読んで、僕はすぐに分かった。
これは手書きで書いたものを入れ直したメッセージであることが。
短いメッセージで、要点を簡潔に伝えていた。
そのメッセージを読むだけで、Yさんの生き生きとした自筆の文字が目に浮かんできた。
今は、すべてパソコンからの入力だ。
たまには、手書きで書かなければと思いながらも、後の事を考えて、すぐにキーボードで入力してしまう。
せめてメモを取るノートくらいは、手書きで書くことにしよう。


“ワープロソフトは、とにかく文字数がかせげる。タイプライターに向かった日は、ワープロのときよりも、コンパクトで抑制のきいた文体になる。手書きの日は、人との関わりや自分の生い立ちについて書くことが多い、ということだった(訳者宛の私信より)。“
T先生の言葉は、それをさらにつきつめていた。
手書きでは、文章が簡潔で、びしっとしまっている。印象の強い文章になる。
ワープロでは、文章が長くなり、言いたいことが薄くなり始める。メリハリがなくる。タイプライターは、その中間になる。
というものだった。
確かに手書きで書いた場合は、一度書いたものに対して、初めから全部消して、書き直すという大胆な修正もやりやすい。ところがワープロになると、なかなか、全部を消して、初めから書き直すということは、やりにくい。
これは、文章だけではなく、デザイナーがスケッチを描くときにも言えることだ。
紙と鉛筆でスケッチを描くときは、気に入らないとページ丸ごと破り捨てることもあるだろう。
ところが、現在はCADやCGを使うことで便利になり、機能がどんどん向上して、今までではとても表現できないことも作りだせる。ただ、一旦入力したものを全部削除してしまって、書き直すことが、その分、難しくなっているのではないだろうか。
一度入力を始めると、大胆な修正はやりにくくなり、細部の修正だけになってしまう。
細かいところは素晴らしく、美しくなっていくかもしれないが、大幅に元に返って作り直すのが難しくなっている。
手書きの文章が言いたいことを簡潔に書くことができる、ということを実感したことがある。
それは、年度の締めの日に、当時の部門長から送られて来たメッセージだった。そのメッセージは、その部門長の配下100名以上の人に送られたメールだ。
部門長 Yさんは、いつもメモを手書きで書いていた。
メールでの連絡は、それほど多くはない。必要な時は電話か面談である。
そのメッセージを読んで、僕はすぐに分かった。
これは手書きで書いたものを入れ直したメッセージであることが。
短いメッセージで、要点を簡潔に伝えていた。
そのメッセージを読むだけで、Yさんの生き生きとした自筆の文字が目に浮かんできた。
今は、すべてパソコンからの入力だ。
たまには、手書きで書かなければと思いながらも、後の事を考えて、すぐにキーボードで入力してしまう。
せめてメモを取るノートくらいは、手書きで書くことにしよう。

