ぶろぐのあたま

オフィスに新人君が入ってきた。
25歳だ。若い。

平均年齢の高い会合に一緒に参加した。
この会合は、終わった後に毎回懇親会を行う。

1月のせいか、オフィスの近くの居酒屋はほぼ満員である。
普段でも混んでいる店であるが、いつもより込み始める時間が早いようだ。
まだ18時半。おそらく19時までには満員お断り状態になるだろう。

店は結構広い。店の形が3つの長方形のブロックが重なったようになっている。
それもすこしずれなから接続されているので、いびつな格好に見える。
居酒屋としてはメニューが多く、値段も安く、近くのサラリーマンが集まってくる。

今夜は、懇親会の参加者は7人である。
会合が9人の参加だったので、今日は懇親会出席率がよい。
これも1月だからだろう。

時間とともに酒が進み、食事も進む。
新人君は、緊張していると言うが、見た目にはそうは見えない。
実は、それほど緊張などしていないのかもしれない。

すべらない話をしろ、といきなり振る。
いきなりというのは、常套手段である。
新人君は、それでもあわてるところがない。

すべらない話というわけでもないのですが、と話し始める。

僕には弟と妹がいるのですが、あるとき弟が真剣な顔をして話しかけてきたのです。
どうしたのだと、いつもの弟らしくない顔つきから、僕も真面目に、弟の顔を見て応えました。
すると、弟は、いきなり、黙って20万円を貸してくれというではないですか。
黙ってと言っても、何に使うのだと問いただしました。
弟はもじもじしながら、なかなか要領を得た答えを言いません。
あやしげなことに使ったのか。
弟は僕からいうのもおかしいですが、根は真面目な奴で、間違ったことをしたとは思えなかったのです。
いまでは教員をやっているくらいですから。

弟は、その時いくつだったんや、と思わず、こちらも話のなかに引きずり込まれるように聞いた。

そのとき弟は、20歳です、とすぐに新人君は答える。

弟に、おまえ、ネットで怪しげなサイトに入って、おかしな請求をされたのと違うかと僕は、問いただしました。怪しげなサイトに入るということなら、弟にも十分ありそうだったのです。

弟は、なかなか返事をしません。

（つづく）