ある夜の出来事
- 2015/03/03
- 00:00
なかなか人の名前が出てこないことが結構ある。
10年以上前のことだ。
その日は、会合があり、会合の後、懇親会があった。
映画の話題になった。どういうきっかけだったか、レネ・ルッソという女優の名前が出てきた。
レネ・ルッソというのは、アメリカの女優である。34歳のときに、「メジャーリーグ」で映画デビュー、「リーサル・ウェポン3」,「リーサル・ウェポン4」,「アウトブレイク」、「身代金」などに出演している。
主役をはったことがないので、名前を聞いても、すぐに顔を思い出す人は、よほどの映画好きだろう。
実際、僕のまわりでは、いままでレネ・ルッソの名前を言って、「あの女優でしょう」という返事をした人は一人だけだ。
映画のキャストでは、2番目や3番目に出てくることが多く、相手役には、クリント・イーストウッド、ダスティ・ホフマン、ロバート・デニーロ、エディ・マーフィという錚々たる俳優たちの名前が並ぶが、レネ・ルッソ自身は、意外と目立たない。
さて、懇親会で、レネ・ルッソが話題に出できたのであるが、同じテーブルで飲んでいたのは僕を入れて5人。
知っている人は、やはり僕以外にはいない。
映画をあまり見ない人には難しい質問である。
結構映画を見ている人も同じテーブルにいたのであるが、レネ・ルッソの名前と顔が一致していない。
ここまでは、想定内の進行だったのであるが、次に、相手役として最も彼女と共演していた男優、「リーサル・ウェポン3」、「リーサル・ウェポン4」,「身代金」での恋人役や夫役であった、その人の名前を、僕も含めて誰も思い出せない。
レネ・ルッソよりは何百倍も有名な男優にも拘らず、名前が出てこない。
もちろん、脳のどこかに確実に記憶されている名前である。
人の名前を思い出せないというのは、僕には時として起こることである。
頭の中には、その人の顔や体が生き生きと動いているのであるが、名前とそのイメージがつながらないのである。その日の夜も、結構映画を見ている人がいたが、僕と全く同じ現象に落ち込んでいる。
他の人は、それほど映画を見ていないようで、名前を思い出せないイライラまでには至っていない。むしろ、思い出せない僕ともう一人のかたを楽しむ趣である。
たかが俳優の名前が記憶の奥底から出てこなくも、なにも問題になることはない。
多少影響が出るとすれば、思い出せない苛立ちを覚えている僕と、もう一人のお酒がまずくなるというだけである。
思い出すことができれば、非常にすっきりするわけで、つまらないことではあるが、一瞬の爽快感を覚えることができるかもしれない。
こういうときには、ノートPCを立ち上げてネットで検索すれば、ただちに回答が出てくるのだが、すぐにそこにすがることは、やりたくない。
そうそう、このときはまだスマホは出ていない頃だった。
学生時代の試験のときに、昨夜覚えた教科書のあの部分が思い出せず、イライラするのと同じだ。
教科書のあのページに書いてあった、あの単語が出てこない、というのと同じ現象だ。
いや、この夜の場合は、もっと以前から僕の脳のなかに記憶されていたことであるから、症状としてはもっと重症である。
試験の一夜漬けだけではなく、人の脳の中には、生まれてから今までに見聞したことがすべて書き込まれているとのこと。
しかし、ほとんどの人は、その内容の一部は取り出せても、全てを取り出すことはできないのであるが、それが正常な人の脳ということらしい。
ということは、思い出せないのが正常である、と居直ってもよいのであるが、居直ってみても、思い出せない不快感を消し去ることはできない。
生体シミュレータに関する研究がある。
医学と工学との連携が成果を出せる分野であり、心臓シミュレータは、研究の領域から、製薬や医学の実践の場で有効に活用される段階に来ていると聞く。
対象が心臓から脳へ進み、脳シミュレータの研究が進み、物忘れの防止に有効になる日もいずれ来るのであろうか。
脳における記憶の仕組みは、機械的なメカニズムに近いらしい。医工連携の対象として、脳が取り上げられると、面白い成果が出てくるのではないだろうか。あるいはすでに研究が進んでいるのかもしれない。
高齢化が進むなかで、脳シミュレータというのは、世の中にインパクトを与えるツールになるに違いない。
結局、その夜は、同じテーブルの他の方が見るに見かねて、ノートPCで回答を簡単に出されたのである。
もう忘れることはないだろう。
この俳優の名前。。。。でも、時として脳の中から出てくる事を拒否されることがあるのだ。
まぁ、これが正常らしいので、よしとしよう。

10年以上前のことだ。
その日は、会合があり、会合の後、懇親会があった。
映画の話題になった。どういうきっかけだったか、レネ・ルッソという女優の名前が出てきた。
レネ・ルッソというのは、アメリカの女優である。34歳のときに、「メジャーリーグ」で映画デビュー、「リーサル・ウェポン3」,「リーサル・ウェポン4」,「アウトブレイク」、「身代金」などに出演している。
主役をはったことがないので、名前を聞いても、すぐに顔を思い出す人は、よほどの映画好きだろう。
実際、僕のまわりでは、いままでレネ・ルッソの名前を言って、「あの女優でしょう」という返事をした人は一人だけだ。
映画のキャストでは、2番目や3番目に出てくることが多く、相手役には、クリント・イーストウッド、ダスティ・ホフマン、ロバート・デニーロ、エディ・マーフィという錚々たる俳優たちの名前が並ぶが、レネ・ルッソ自身は、意外と目立たない。
さて、懇親会で、レネ・ルッソが話題に出できたのであるが、同じテーブルで飲んでいたのは僕を入れて5人。
知っている人は、やはり僕以外にはいない。
映画をあまり見ない人には難しい質問である。
結構映画を見ている人も同じテーブルにいたのであるが、レネ・ルッソの名前と顔が一致していない。
ここまでは、想定内の進行だったのであるが、次に、相手役として最も彼女と共演していた男優、「リーサル・ウェポン3」、「リーサル・ウェポン4」,「身代金」での恋人役や夫役であった、その人の名前を、僕も含めて誰も思い出せない。
レネ・ルッソよりは何百倍も有名な男優にも拘らず、名前が出てこない。
もちろん、脳のどこかに確実に記憶されている名前である。
人の名前を思い出せないというのは、僕には時として起こることである。
頭の中には、その人の顔や体が生き生きと動いているのであるが、名前とそのイメージがつながらないのである。その日の夜も、結構映画を見ている人がいたが、僕と全く同じ現象に落ち込んでいる。
他の人は、それほど映画を見ていないようで、名前を思い出せないイライラまでには至っていない。むしろ、思い出せない僕ともう一人のかたを楽しむ趣である。
たかが俳優の名前が記憶の奥底から出てこなくも、なにも問題になることはない。
多少影響が出るとすれば、思い出せない苛立ちを覚えている僕と、もう一人のお酒がまずくなるというだけである。
思い出すことができれば、非常にすっきりするわけで、つまらないことではあるが、一瞬の爽快感を覚えることができるかもしれない。
こういうときには、ノートPCを立ち上げてネットで検索すれば、ただちに回答が出てくるのだが、すぐにそこにすがることは、やりたくない。
そうそう、このときはまだスマホは出ていない頃だった。
学生時代の試験のときに、昨夜覚えた教科書のあの部分が思い出せず、イライラするのと同じだ。
教科書のあのページに書いてあった、あの単語が出てこない、というのと同じ現象だ。
いや、この夜の場合は、もっと以前から僕の脳のなかに記憶されていたことであるから、症状としてはもっと重症である。
試験の一夜漬けだけではなく、人の脳の中には、生まれてから今までに見聞したことがすべて書き込まれているとのこと。
しかし、ほとんどの人は、その内容の一部は取り出せても、全てを取り出すことはできないのであるが、それが正常な人の脳ということらしい。
ということは、思い出せないのが正常である、と居直ってもよいのであるが、居直ってみても、思い出せない不快感を消し去ることはできない。
生体シミュレータに関する研究がある。
医学と工学との連携が成果を出せる分野であり、心臓シミュレータは、研究の領域から、製薬や医学の実践の場で有効に活用される段階に来ていると聞く。
対象が心臓から脳へ進み、脳シミュレータの研究が進み、物忘れの防止に有効になる日もいずれ来るのであろうか。
脳における記憶の仕組みは、機械的なメカニズムに近いらしい。医工連携の対象として、脳が取り上げられると、面白い成果が出てくるのではないだろうか。あるいはすでに研究が進んでいるのかもしれない。
高齢化が進むなかで、脳シミュレータというのは、世の中にインパクトを与えるツールになるに違いない。
結局、その夜は、同じテーブルの他の方が見るに見かねて、ノートPCで回答を簡単に出されたのである。
もう忘れることはないだろう。
この俳優の名前。。。。でも、時として脳の中から出てくる事を拒否されることがあるのだ。
まぁ、これが正常らしいので、よしとしよう。
