放送は正確に(2)
- 2017/11/26
- 00:03
車掌さんの横には、二人組の一人、女性が心配そうに立って、やりとりを見ている。
席に座っている男性は、切符を取り出して、車掌さんに渡す。
僕を含め、そこにいる人の視線が車掌さんの手元に集まる。
小柄な女車掌さんは、手に取った切符を注意深く見ている。
何度も見直している。
僕は僕で、機械で発券していても、ダブルブッキングはあるかもしれないと勝手に考えている。
車掌さんが勝ち誇ったように、厳しく言い渡す。まるで判決をいう裁判官だ。
「今日は17日ですが、この切符は16日のものです」
「……..」座っている男性の声は聞こえない。
剣道の試合であれば、いきなり面!を入れたようなものだ。
女性の声が大きくなったような気がする。
「自由席に移っていただけますか。指定席は満席ですので、空いていません」
男性は、何も言わずに、あわてて荷物を抱えて、前方の車両に向かっていく。
追い打ちをかけるように、女車掌さんは、とどめのような一撃。
「自由席は、後ろの車両です」
男性が向かった方向には自由席はないのだ。
さらにあわてて、男性が方向転換して、走り出す。
走り去った男性乗客と車掌さんとのやりとりを見ていた女性は、やっと安堵の表情を見せて、本来座るべき席に座った。
僕は僕で、乗車日を間違えるとはどういうことだろうと考えている。
本人が乗った今日、17日が本来乗るべき日で、17日のサンダーバードに乗って、明日金沢で用事があったのだろう。明日は土曜日なので、プライベートの約束かなにかだろうと推測している。
切符を買うときに単に日にちを間違えたと考えるほうが、ありうることだ。
そういう僕自身も、偉そうなことは言えない。
1日間違えて切符を買って、新幹線の駅に行ってから気がついたことがあった。
それもビジネスでの出張ではなく、プライベートの旅行だった。
しばらくして、車内放送が流れる。
「この列車の指定席は満席です。空いている席はありません。
お持ちの特急券の座席番号をご確認の上、席にお座りください」
まさに、さきほどのくだりを反映した放送である。
だが、車内放送はこれで終わりだった。
おいおい、それではだめだろう。
「お持ちの特急券の日付もご確認の上、席にお座りください」だろう。
日付も言わないとだめだ。
でも、まあ、そんなケースは、めったにあることではないからいいか。
ということは、今日は貴重な経験をした日ということになる。
(つづく)
席に座っている男性は、切符を取り出して、車掌さんに渡す。
僕を含め、そこにいる人の視線が車掌さんの手元に集まる。
小柄な女車掌さんは、手に取った切符を注意深く見ている。
何度も見直している。
僕は僕で、機械で発券していても、ダブルブッキングはあるかもしれないと勝手に考えている。
車掌さんが勝ち誇ったように、厳しく言い渡す。まるで判決をいう裁判官だ。
「今日は17日ですが、この切符は16日のものです」
「……..」座っている男性の声は聞こえない。
剣道の試合であれば、いきなり面!を入れたようなものだ。
女性の声が大きくなったような気がする。
「自由席に移っていただけますか。指定席は満席ですので、空いていません」
男性は、何も言わずに、あわてて荷物を抱えて、前方の車両に向かっていく。
追い打ちをかけるように、女車掌さんは、とどめのような一撃。
「自由席は、後ろの車両です」
男性が向かった方向には自由席はないのだ。
さらにあわてて、男性が方向転換して、走り出す。
走り去った男性乗客と車掌さんとのやりとりを見ていた女性は、やっと安堵の表情を見せて、本来座るべき席に座った。
僕は僕で、乗車日を間違えるとはどういうことだろうと考えている。
本人が乗った今日、17日が本来乗るべき日で、17日のサンダーバードに乗って、明日金沢で用事があったのだろう。明日は土曜日なので、プライベートの約束かなにかだろうと推測している。
切符を買うときに単に日にちを間違えたと考えるほうが、ありうることだ。
そういう僕自身も、偉そうなことは言えない。
1日間違えて切符を買って、新幹線の駅に行ってから気がついたことがあった。
それもビジネスでの出張ではなく、プライベートの旅行だった。
しばらくして、車内放送が流れる。
「この列車の指定席は満席です。空いている席はありません。
お持ちの特急券の座席番号をご確認の上、席にお座りください」
まさに、さきほどのくだりを反映した放送である。
だが、車内放送はこれで終わりだった。
おいおい、それではだめだろう。
「お持ちの特急券の日付もご確認の上、席にお座りください」だろう。
日付も言わないとだめだ。
でも、まあ、そんなケースは、めったにあることではないからいいか。
ということは、今日は貴重な経験をした日ということになる。
(つづく)