Mr.さんきゅう
- 2018/11/21
- 00:00
N会のメンバーでもあるI君。
同じ会社に、Mr.さんきゅうと言われている男性がいるという。
それって、奥さんの産休のときに頑張ったから、Mr.さんきゅうなのかと聞くと、そうではないという。
そのあだ名が出てきた由来を聞いた。
これは、I君が現役時代の話なので、かなり昔のことだ。
Mr.さんきゅうことSさんが、海外出張にいくことなった。
仕事の関係で、それほど海外にいくことがない部署の所属なのだが、Sさんが、はじめての海外出張に行くことになった。
仕事で初めてのこととなると、会社のなかでも中堅にさしかかったSさんも、緊張するなと言っても、それは難しい。
飛行機のなかでもリラックスすればいいのに、なんとなく落ち着かない。
席はビジネスシートである。ゆったりすればいいのだが、簡単にはのんびりとはできない。
ドリンクサービスのビールを飲んで、トイレに行きたくなったSさん。
機内の後ろにあるトイレに向かう。
静かな機内。
揺れることもなく、ジェット機は順調な飛行を続けている。
窓の外はすっかり日も落ち、真っ暗だ。
後方のトイレに着いたSさん。
ドアの表示を注意深く見て行く。
トイレの表示は、「Vacant」か「Occupied」である。
トイレの中に入って、スライド式の鍵を締めると、ドアの外の表示は、「Vacant」から「Occupied」に変わる。
S君は、ドアの表示を見て行く。
初めのトイレは、「Occupied」になっている。
隣は、「Vacant」である。
そのままドアを押して開けると、なんとそこには、金髪の女性が座っているではないか。
いま、目の前に座っている女性。
あわててトイレに駆け込んだのか、ドアをきっちりと閉めなかったようだ。
S君は、突然目の前に金髪の女性が座っているのを見て、日本人ではないことは、すぐに認識した。
そして、発した言葉が、「Thank You!」だった。
本来なら、「Sorry!」と言うべきところを、慣れない海外出張、極度の緊張のあまり、全く意味をなさない単語が口から出てしまったのだ。
その話をしていたI君が、言う。
それ以来、S君のあだ名は、Mr.さんきゅうになったと。
「ほんまかいな。つくったんとちゃうん」と僕が突っ込む。
「いや、これはほんまの話や」とI君が即座に返す。
「大体そんな失敗談を他人に言うかな。他人に話したから、それから、その人のあだ名がMr.さんきゅうになったわけやろ。他人に話さんかったら、そんなあだ名は生まれへんやろ」
「それはやな、そのS君というのが、結構おもろい奴でな。自分の失敗談も、面白い話として、あちこちで言いふらすわけや。そういう奴やから、それを聞いた同僚が、お前をこれから、Mr.さんきゅうと呼ぶ、ということになったんや」
「へえ、おかしなおっさんやな」
「これには、後日談があってな」とさらにI君は、話を続ける。
「S君が言うには、あのドアを開けた時に、思わず間違えて、Thank you!と言ったとみんな思っているやろけど、ほんまは、違うんやで、と言うのや。S君がいうには、ええもんを見せてくれて、ありがとう、って気持ちを込めて、Thank you!と言ったんやと言い張るんや」
「それは嘘やろ、後付けの話に決まってるわ。でも、そいつ、おもろい奴やな」
その日は、笑いがまだまだ続いた夜だった。
同じ会社に、Mr.さんきゅうと言われている男性がいるという。
それって、奥さんの産休のときに頑張ったから、Mr.さんきゅうなのかと聞くと、そうではないという。
そのあだ名が出てきた由来を聞いた。
これは、I君が現役時代の話なので、かなり昔のことだ。
Mr.さんきゅうことSさんが、海外出張にいくことなった。
仕事の関係で、それほど海外にいくことがない部署の所属なのだが、Sさんが、はじめての海外出張に行くことになった。
仕事で初めてのこととなると、会社のなかでも中堅にさしかかったSさんも、緊張するなと言っても、それは難しい。
飛行機のなかでもリラックスすればいいのに、なんとなく落ち着かない。
席はビジネスシートである。ゆったりすればいいのだが、簡単にはのんびりとはできない。
ドリンクサービスのビールを飲んで、トイレに行きたくなったSさん。
機内の後ろにあるトイレに向かう。
静かな機内。
揺れることもなく、ジェット機は順調な飛行を続けている。
窓の外はすっかり日も落ち、真っ暗だ。
後方のトイレに着いたSさん。
ドアの表示を注意深く見て行く。
トイレの表示は、「Vacant」か「Occupied」である。
トイレの中に入って、スライド式の鍵を締めると、ドアの外の表示は、「Vacant」から「Occupied」に変わる。
S君は、ドアの表示を見て行く。
初めのトイレは、「Occupied」になっている。
隣は、「Vacant」である。
そのままドアを押して開けると、なんとそこには、金髪の女性が座っているではないか。
いま、目の前に座っている女性。
あわててトイレに駆け込んだのか、ドアをきっちりと閉めなかったようだ。
S君は、突然目の前に金髪の女性が座っているのを見て、日本人ではないことは、すぐに認識した。
そして、発した言葉が、「Thank You!」だった。
本来なら、「Sorry!」と言うべきところを、慣れない海外出張、極度の緊張のあまり、全く意味をなさない単語が口から出てしまったのだ。
その話をしていたI君が、言う。
それ以来、S君のあだ名は、Mr.さんきゅうになったと。
「ほんまかいな。つくったんとちゃうん」と僕が突っ込む。
「いや、これはほんまの話や」とI君が即座に返す。
「大体そんな失敗談を他人に言うかな。他人に話したから、それから、その人のあだ名がMr.さんきゅうになったわけやろ。他人に話さんかったら、そんなあだ名は生まれへんやろ」
「それはやな、そのS君というのが、結構おもろい奴でな。自分の失敗談も、面白い話として、あちこちで言いふらすわけや。そういう奴やから、それを聞いた同僚が、お前をこれから、Mr.さんきゅうと呼ぶ、ということになったんや」
「へえ、おかしなおっさんやな」
「これには、後日談があってな」とさらにI君は、話を続ける。
「S君が言うには、あのドアを開けた時に、思わず間違えて、Thank you!と言ったとみんな思っているやろけど、ほんまは、違うんやで、と言うのや。S君がいうには、ええもんを見せてくれて、ありがとう、って気持ちを込めて、Thank you!と言ったんやと言い張るんや」
「それは嘘やろ、後付けの話に決まってるわ。でも、そいつ、おもろい奴やな」
その日は、笑いがまだまだ続いた夜だった。
