Y教授
- 2015/03/18
- 00:00
大学の先生の役職の言い方では、今は、准教授という。
以前は助教授だった。
僕が学生のころに、Y先生がいた。
有名な先生だったらしい。
名前を善之(よしゆき)と言う。
Y先生は非常に優秀だったので、助教授時代は、名前を善之助(ぜんのすけ)と勘違いされたそうだ。
助教授でありながら、善之助 教授と思われたのである。
僕が学生のときに、Y先生の授業を受ける機会があった。
必修科目なので避けるわけにはいかない。
当時は、正真正銘の教授になっておられて、厳しい先生として有名だった。
Y先生の授業を寝坊して欠席したことがあった。
しかもその日は、珍しく前回の授業のときに、宿題が出ていた。
宿題を提出しないと、単位が取れないと言われていた。
必修科目の単位を落とすわけにはいかないので、やむなく、欠席をした日の遅い時間に、Y先生の研究室に宿題を持っていくことにした。
怖い先生の研究室に行くのである。
相当の覚悟がいる。
僕も当時は、真面目な学生だったのかもしれない。
勉強はしないが、純情だったのかもしれない。
びくびくしながら、Y先生の研究室に入っていった。
宿題を提出しにきたことを告げると、宿題を書いたノートをY先生が見られる。
それは、今思えば、非常に簡単な問題である。
ある線図を書く問題だ。
計算した結果を図に表す。ある曲線を書けばよいのである。
そのときY先生が言われたことは、いまでもはっきりと覚えている。
その線図は、端部の曲線の傾きが重要なのだ。
そこを僕自身、十分理解せずに、適当に線を引いていた。
「君は前回の授業に出ていなかったかね」
「いえ、出ていました」
出ていたのは事実だ。
嘘ではない。
「それでは、この部分の線の書き方はおかしいでしょう。
ここは、接線にならないといけない。
講義を聞いていなかったのですか」
間違えていることは、確かであり、授業を受けていたけど、しっかりと理解していなかったのである。
返す言葉もなく、Y先生の研究室を出た。
ただ、Y先生の言われたことは、基礎的なことで、理論式を考えれば、指摘を受けたところの線の書き方は分かるのである。
本当に理解していれば、僕が書いたような線図は書かないのである。
物事の本質を教えられていたのである。
と思ったのは、それから相当時間が経ってからだった。
そのことを分かるようになってから、思った。
大学の先生の中にも、その分野で顕著な実績を残している方は、やはり違うのだと。

以前は助教授だった。
僕が学生のころに、Y先生がいた。
有名な先生だったらしい。
名前を善之(よしゆき)と言う。
Y先生は非常に優秀だったので、助教授時代は、名前を善之助(ぜんのすけ)と勘違いされたそうだ。
助教授でありながら、善之助 教授と思われたのである。
僕が学生のときに、Y先生の授業を受ける機会があった。
必修科目なので避けるわけにはいかない。
当時は、正真正銘の教授になっておられて、厳しい先生として有名だった。
Y先生の授業を寝坊して欠席したことがあった。
しかもその日は、珍しく前回の授業のときに、宿題が出ていた。
宿題を提出しないと、単位が取れないと言われていた。
必修科目の単位を落とすわけにはいかないので、やむなく、欠席をした日の遅い時間に、Y先生の研究室に宿題を持っていくことにした。
怖い先生の研究室に行くのである。
相当の覚悟がいる。
僕も当時は、真面目な学生だったのかもしれない。
勉強はしないが、純情だったのかもしれない。
びくびくしながら、Y先生の研究室に入っていった。
宿題を提出しにきたことを告げると、宿題を書いたノートをY先生が見られる。
それは、今思えば、非常に簡単な問題である。
ある線図を書く問題だ。
計算した結果を図に表す。ある曲線を書けばよいのである。
そのときY先生が言われたことは、いまでもはっきりと覚えている。
その線図は、端部の曲線の傾きが重要なのだ。
そこを僕自身、十分理解せずに、適当に線を引いていた。
「君は前回の授業に出ていなかったかね」
「いえ、出ていました」
出ていたのは事実だ。
嘘ではない。
「それでは、この部分の線の書き方はおかしいでしょう。
ここは、接線にならないといけない。
講義を聞いていなかったのですか」
間違えていることは、確かであり、授業を受けていたけど、しっかりと理解していなかったのである。
返す言葉もなく、Y先生の研究室を出た。
ただ、Y先生の言われたことは、基礎的なことで、理論式を考えれば、指摘を受けたところの線の書き方は分かるのである。
本当に理解していれば、僕が書いたような線図は書かないのである。
物事の本質を教えられていたのである。
と思ったのは、それから相当時間が経ってからだった。
そのことを分かるようになってから、思った。
大学の先生の中にも、その分野で顕著な実績を残している方は、やはり違うのだと。
