1イニング3アウト
- 2015/04/01
- 00:01
大学の水泳部には、いろいろなタイプの人間がいた。
その中の何人かをこのブログでも話してきた。
ここで紹介するのは、ユニークな後輩である。
水泳をやっている人は、競技中は裸であるので、筋肉隆々というスタイルを想像する人がいるかもしれないが、必ずしもそういう体になるとは限らない。
むしろ、それとは反対の場合が多い。
もちろん、肩とか、胸の筋肉がある程度の厚さになり、強固になるが、競泳は、相手に接触する格闘技ではないので、柔らかな筋肉がつくことが多い。
いわゆる運動神経についても、素晴らしい人も中にはいるが、泳ぐということは、運動神経の点において、優れているということとは別である。
水泳をやっている人は、力のスポーツでは、ある程度の力量を発揮する場合が多いが、球技となると関連がない場合が多い。
大学の教養の間、すなわち1,2年生の時は体育の授業があった。
そのなかで球技をすることもある。
僕の大学では、大体が運動が苦手な学生が多かったので、あまり様にはならないが、試合形式の授業もある。
僕自身も、サッカーを授業でやったことがある。
フリーキックから会心のゴールを決めたことは、いまでも覚えている。
生涯に一度だけだったように思う。
後輩の一人に、結構運動神経の点では劣る学生がいた。
もちろん水泳については、一般の学生に比べると格段に上であるが、球技がさっぱりだった。
あるとき、プールの横の部室で、部員が午後の時間、集まっていた。
当時は、そこで麻雀をしたり、食事をしたりすることもあったが、多くは、先輩、後輩が一緒になって、だべっている時間が多かった。
運動神経が劣っている後輩が帰ってきた。
妙に元気がない。
いつもは軽口をたたいて明るい奴だ。
「どうしたんだ」と同じ学年の部員が心配そうに声をかける。
「いや、なんでもない」
なんでもないというのが返って怪しい。
「いつもと違うぞ」
「いや、なんでもない」
「そんなことはないやろ。どないしてん」と関西出身の同学年のもう一人が追求の手を緩めない。
「体育の授業で疲れただけだ」
「なにやってん」と関西出身。
「ソフトボール」
「楽な体育や」
「ふつうはな」とすこし元気が戻ってきたようだ。
「ということは、ふつうやなかってんな。なにがあってん」
「なにもない」またまた貝の口をとざすようだ。
口がとんがっている。
「なにかあったんやろ」
「エラーでもしたんか」ともう一人が口をはさんでくる。
「だから、なんでもない」と怒り出している。
このとき、彼の後ろから、腕を抱えて、体を抑えにかかる奴がいる。
もうひとりが、両足を抑えて、その間に自分の足を入れる。
いいコンビネーションだ。
股間への攻めだ。
電気あんまというやつだ。
男にとってはつらい。
「やめんかい」と言いながら、冗談でふざけているということは分かっていても、股間が痛い。
「はよ、白状せんかい。言えば楽になる」と二人は攻めの手を休めない。
とうとう、わかった、わかったと彼が言う。
彼が白状したところ、彼はソフトボールの試合で、1イニングで一人で3アウトを取られたのである。
これは珍しいプレーである。
おそらくプロ野球では記録されていないに違いない。
そのイニングが彼から始まったとすると、打者19人。
最後に満塁で終わったとしても、1イニングで13点入った計算になる。
それを聞いた周りの連中は、彼を責める手を離し、笑い転げている。
同じチームの他のメンバーは打ちまくったわけで、試合には大勝したが、彼一人が落ち込んだわけだ。
「最後のアウトは、どうみてもセーフだったのに、審判がおもしろがって、アウトにしたんだ」と言い訳をしていたが、どうみても、彼の運動神経の悪さはピカイチということだ。
とにかく、いろんな部員がいて、練習以外は、面白い時間がいつもあった。

その中の何人かをこのブログでも話してきた。
ここで紹介するのは、ユニークな後輩である。
水泳をやっている人は、競技中は裸であるので、筋肉隆々というスタイルを想像する人がいるかもしれないが、必ずしもそういう体になるとは限らない。
むしろ、それとは反対の場合が多い。
もちろん、肩とか、胸の筋肉がある程度の厚さになり、強固になるが、競泳は、相手に接触する格闘技ではないので、柔らかな筋肉がつくことが多い。
いわゆる運動神経についても、素晴らしい人も中にはいるが、泳ぐということは、運動神経の点において、優れているということとは別である。
水泳をやっている人は、力のスポーツでは、ある程度の力量を発揮する場合が多いが、球技となると関連がない場合が多い。
大学の教養の間、すなわち1,2年生の時は体育の授業があった。
そのなかで球技をすることもある。
僕の大学では、大体が運動が苦手な学生が多かったので、あまり様にはならないが、試合形式の授業もある。
僕自身も、サッカーを授業でやったことがある。
フリーキックから会心のゴールを決めたことは、いまでも覚えている。
生涯に一度だけだったように思う。
後輩の一人に、結構運動神経の点では劣る学生がいた。
もちろん水泳については、一般の学生に比べると格段に上であるが、球技がさっぱりだった。
あるとき、プールの横の部室で、部員が午後の時間、集まっていた。
当時は、そこで麻雀をしたり、食事をしたりすることもあったが、多くは、先輩、後輩が一緒になって、だべっている時間が多かった。
運動神経が劣っている後輩が帰ってきた。
妙に元気がない。
いつもは軽口をたたいて明るい奴だ。
「どうしたんだ」と同じ学年の部員が心配そうに声をかける。
「いや、なんでもない」
なんでもないというのが返って怪しい。
「いつもと違うぞ」
「いや、なんでもない」
「そんなことはないやろ。どないしてん」と関西出身の同学年のもう一人が追求の手を緩めない。
「体育の授業で疲れただけだ」
「なにやってん」と関西出身。
「ソフトボール」
「楽な体育や」
「ふつうはな」とすこし元気が戻ってきたようだ。
「ということは、ふつうやなかってんな。なにがあってん」
「なにもない」またまた貝の口をとざすようだ。
口がとんがっている。
「なにかあったんやろ」
「エラーでもしたんか」ともう一人が口をはさんでくる。
「だから、なんでもない」と怒り出している。
このとき、彼の後ろから、腕を抱えて、体を抑えにかかる奴がいる。
もうひとりが、両足を抑えて、その間に自分の足を入れる。
いいコンビネーションだ。
股間への攻めだ。
電気あんまというやつだ。
男にとってはつらい。
「やめんかい」と言いながら、冗談でふざけているということは分かっていても、股間が痛い。
「はよ、白状せんかい。言えば楽になる」と二人は攻めの手を休めない。
とうとう、わかった、わかったと彼が言う。
彼が白状したところ、彼はソフトボールの試合で、1イニングで一人で3アウトを取られたのである。
これは珍しいプレーである。
おそらくプロ野球では記録されていないに違いない。
そのイニングが彼から始まったとすると、打者19人。
最後に満塁で終わったとしても、1イニングで13点入った計算になる。
それを聞いた周りの連中は、彼を責める手を離し、笑い転げている。
同じチームの他のメンバーは打ちまくったわけで、試合には大勝したが、彼一人が落ち込んだわけだ。
「最後のアウトは、どうみてもセーフだったのに、審判がおもしろがって、アウトにしたんだ」と言い訳をしていたが、どうみても、彼の運動神経の悪さはピカイチということだ。
とにかく、いろんな部員がいて、練習以外は、面白い時間がいつもあった。
