そこまでやるか(2)
- 2020/10/02
- 00:00
IT会社に勤務していたころの話だ。
地方の都市へサポートに行く。
技術系のシステムの営業である。
お客様は地元の自動車会社である。
当日は、その自動車会社は、幅広くいろいろな車種を設計製造販売をしていた。
地元の営業所に午前中に入る。
担当営業チームと午後の訪問のための打ち合わせを行う。
打ち合わせの後、早めの昼を食べ、いよいよ出発である。
今日は4人のメンバーだ。
営業所の前の道は、幹線道路になっていて、タクシーがいくらでも流しているような場所だ。
タクシーを使うことは、当時は当然のことだった。
時間が大切なので、タクシーを使うことで自分の有効な時間が増えれば、そのほうが余程効果的であるというロジックである。
新入社員が、お客様から帰ってくるのが遅いと上司から叱られた。
どこかで油を売っていたわけではない。
彼は、タクシーを使わずに、電車を使ってオフィスに帰ってきたのだ。
そのお客様の場所は、タクシーで行くのと、電車に乗るのと比べると結構な時間の差があったのだ。
上司が叱る理由を言う。
「タクシーを乗って早く帰ってくれば、それだけ多くの時間を仕事に使える」という訳だ。
当時は、メールもなければ、ネットがない時代だ。
オフィスにいないと仕事ができない時代である。
そのため、仕事をやること=オフィスにいることとなる。
というわけで、メンバーが4人いることもあり、タクシーでの移動は全く問題がなかったのだ。
僕が他のメンバーと道で立って、待っていると、すぐに空車がやってきた。
担当営業がこういう時は手を挙げて、車を停めることが一般的だ。
僕は、彼が手を挙げると思ってみていると、彼は、その空車を見過ごすのだ。
「今の車、空車でしたでしょ。なんで乗らないのですか」とすぐに聞いた。
すると、彼は何と答えたと思うかな?
うーん、それはね、きっと、4人が乗るには小さいので、5人乗りのタクシーが来るのを待つことにした、でしょう。
いや、その空車も十分大きかったのだよ。
へぇー、そうなの。なぜ止めなかったのかな。
変な答えを言うと、ボォーと生きてんじゃないよ、と叱られるかな。
はははは、当時はまだチコちゃんはいないからね。
彼の答えはね、
「あのタクシーは、お客様の車でなかったからです」というのだよ。
今ではその自動車会社は、タクシーを製造していないのだけど、当時はタクシーも製造していたのだ。
それで、そのお客様を訪問するときに乗るタクシーは、お客様が製造した車にするというのが、営業チームの方針だったのだね。
自分の車で乗り付けるときは、その自動車会社の車にするというのは、よく聞くけど、タクシーまでこだわるというのは、そこまでやるのかって、思ったね。
タクシーのこだわりもあるけれど、車関係でいうと、タイヤメーカーを訪問するときは、自分の車だと、タイヤもそのタイヤメーカーのものに履き替えるという人もいたね。
まあ、それだけ徹底してお客様のことを考えるという方針は、営業チームとしては当然のことかもしれないね。
今でも時々訪問する街。路面電車が走っている。

地方の都市へサポートに行く。
技術系のシステムの営業である。
お客様は地元の自動車会社である。
当日は、その自動車会社は、幅広くいろいろな車種を設計製造販売をしていた。
地元の営業所に午前中に入る。
担当営業チームと午後の訪問のための打ち合わせを行う。
打ち合わせの後、早めの昼を食べ、いよいよ出発である。
今日は4人のメンバーだ。
営業所の前の道は、幹線道路になっていて、タクシーがいくらでも流しているような場所だ。
タクシーを使うことは、当時は当然のことだった。
時間が大切なので、タクシーを使うことで自分の有効な時間が増えれば、そのほうが余程効果的であるというロジックである。
新入社員が、お客様から帰ってくるのが遅いと上司から叱られた。
どこかで油を売っていたわけではない。
彼は、タクシーを使わずに、電車を使ってオフィスに帰ってきたのだ。
そのお客様の場所は、タクシーで行くのと、電車に乗るのと比べると結構な時間の差があったのだ。
上司が叱る理由を言う。
「タクシーを乗って早く帰ってくれば、それだけ多くの時間を仕事に使える」という訳だ。
当時は、メールもなければ、ネットがない時代だ。
オフィスにいないと仕事ができない時代である。
そのため、仕事をやること=オフィスにいることとなる。
というわけで、メンバーが4人いることもあり、タクシーでの移動は全く問題がなかったのだ。
僕が他のメンバーと道で立って、待っていると、すぐに空車がやってきた。
担当営業がこういう時は手を挙げて、車を停めることが一般的だ。
僕は、彼が手を挙げると思ってみていると、彼は、その空車を見過ごすのだ。
「今の車、空車でしたでしょ。なんで乗らないのですか」とすぐに聞いた。
すると、彼は何と答えたと思うかな?
うーん、それはね、きっと、4人が乗るには小さいので、5人乗りのタクシーが来るのを待つことにした、でしょう。
いや、その空車も十分大きかったのだよ。
へぇー、そうなの。なぜ止めなかったのかな。
変な答えを言うと、ボォーと生きてんじゃないよ、と叱られるかな。
はははは、当時はまだチコちゃんはいないからね。
彼の答えはね、
「あのタクシーは、お客様の車でなかったからです」というのだよ。
今ではその自動車会社は、タクシーを製造していないのだけど、当時はタクシーも製造していたのだ。
それで、そのお客様を訪問するときに乗るタクシーは、お客様が製造した車にするというのが、営業チームの方針だったのだね。
自分の車で乗り付けるときは、その自動車会社の車にするというのは、よく聞くけど、タクシーまでこだわるというのは、そこまでやるのかって、思ったね。
タクシーのこだわりもあるけれど、車関係でいうと、タイヤメーカーを訪問するときは、自分の車だと、タイヤもそのタイヤメーカーのものに履き替えるという人もいたね。
まあ、それだけ徹底してお客様のことを考えるという方針は、営業チームとしては当然のことかもしれないね。
今でも時々訪問する街。路面電車が走っている。
